てんかんは障害者何級ですか? 生活をする上で様々な制限があると思うのですが?

てんかんの障害者手帳等級と日常生活の制限

障害者手帳の等級

てんかんは「精神障害者保健福祉手帳」の対象となり、発作の頻度・タイプ・日常生活への影響に応じて1~3級に区分されます。

等級判定基準

等級発作の条件(十分な治療後も持続)生活制限
1級AまたはBタイプの発作が月1回以上(例:意識障害や転倒を伴う発作)かつ常時介護が必要常時の援助が必要
2級A/Bタイプが年2回以上 または C/Dタイプが月1回以上(例:意識喪失や随意運動喪失)かつ日常生活が著しく制限自立した生活が困難
3級A/Bタイプが年2回未満 または C/Dタイプが月1回未満かつ労働制限あり就労面で制約

発作タイプの定義

  • A: 意識障害+不適切行動
  • B: 転倒を伴う発作(意識の有無不問)
  • C: 意識喪失(転倒なし)
  • D: 随意運動喪失(意識あり)

日常生活の制限と注意点

  1. 生活リズムの厳格化
    • 睡眠不足回避: 成人6-8時間/日、子ども8-10時間/日が必要
    • 夜勤制限: 発作が抑制されていない場合は夜勤不可
  1. 行動制約
    • 危険行為の回避: 高所作業・水泳・一人入浴等の制限
    • 連続作業禁止: 長時間の集中作業は発作リスク上昇
  1. 服薬管理の徹底
    • 飲み忘れ防止: 発作抑制のため厳密な時間管理が必要
    • 吐瀉時対応: 服用直後(15-30分以内)に嘔吐した場合は再服用
  1. 社会活動の制限
    • 運転制限: 発作が2年以上なければ可能(条件付き)
    • 就労制約: 発作頻度によっては障害者枠での就職が現実的

支援制度

  • 精神障害者手帳: 公共料金割引・税金控除
  • 自立支援医療: 医療費自己負担1割
  • 障害年金: 2級(年2回以上のA/Bタイプ発作)で月約8万円(2023年基準)

発作が薬物治療で完全に抑制されている場合は原則として認定対象外ですが、発作間欠期の認知障害や精神症状が重い場合は上位等級認定の可能性があります。日常生活の制限内容は発作タイプと頻度によって個別に評価されるため、主治医と相談の上で適切な支援制度を活用することが重要です。


申請条件

  • 初診日から6か月以上経過していること
  • 発作の種類・頻度・日常生活への影響が基準を満たすこと
  • 継続的な治療を受けていることが前提

申請手続きの流れ

  1. 必要書類の準備
    • 申請書(市区町村窓口または医療機関で入手)
    • 診断書(精神科医またはてんかん治療専門医が作成)
      • 精神障害の初診日から6か月以上経過後作成
      • 精神保健指定医以外でも作成可能(継続的にてんかん治療を受けている場合)
    • 本人写真(縦4cm×横3cm)
    • 障害年金証書写し(精神障害年金受給者の場合、診断書代用可)
  1. 申請提出
    • 提出先: 居住地の市区町村障害福祉課/精神保健福祉課
    • 提出方法: 本人/家族/医療関係者による代理申請可能
    • マイナンバー記載必須(個人番号カードまたは通知カード+身分証提示)
  1. 審査期間
    • 約2か月間(都道府県/政令市の精神保健福祉センターで審査)
    • 審査基準: 発作頻度・日常生活制限度・治療状況を総合判断
  1. 手帳交付
    • 有効期間: 2年間(更新必要)
    • 様式選択: 従来の紙形式かカード形式を選択可能(2020年10月以降申請者)

重要なポイント

  • 診断書の有効性: 申請日から3か月~1年以内の診断書が必要(自治体により異なる)
  • 更新手続き: 有効期限3か月前から更新申請可能
  • 異議申立: 不承認通知を受け取った場合、60日以内に再審査請求可能

申請時には必ず自治体の障害福祉窓口で最新要件を確認し、主治医と連携しながら書類作成を行うことが重要です。


てんかんの生活支障度評価基準

てんかんの生活支障度は発作の種類・頻度・日常生活能力の制限を総合的に評価されます。主に以下の3要素で判定されます。

1. 発作の医学的分類と頻度

  • Aタイプ: 意識障害+不適切行動(例:突然叫ぶ/徘徊)
  • Bタイプ: 転倒を伴う発作(例:強直間代発作)
  • Cタイプ: 意識喪失(転倒なし)
  • Dタイプ: 随意運動喪失(例:脱力発作)
    1級: A/Bが月1回以上、2級: A/Bが年2回以上またはC/Dが月1回以上

2. 日常生活能力の7項目評価

(1) 食事: 栄養バランス・調理能力
(2) 清潔保持: 入浴・身だしなみ管理
(3) 金銭管理: 計画的な買い物能力
(4) 通院服薬: 自己管理能力
(5) コミュニケーション: 意思伝達能力
(6) 社会適応: 職場/学校での適応力
(7) 危険認識: 発作リスク管理能力
→ 2級判定例: 入浴見守り必要・包丁使用禁止

3. 精神神経症状の併存評価

  • 知的障害: 記憶力・判断力の低下
  • 認知機能障害: 注意力散漫・遂行機能低下
  • 精神症状: 抑うつ・不安障害の併存
    発作頻度が低くても上位等級認定される場合あり

等級判定の実際的な課題

  • 「発作間欠期」の評価: 発作がない期間の日常生活能力が重視され、実際の制限が過小評価されやすい
  • 診断書の限界: 神経内科医が作成する診断書では日常生活制限の記載が不十分な傾向
  • 証拠収集の必要性: 家族の見守り記録・就労制限の証明書類が重要

厚生労働省の基準では、「日常生活が著しい制限を受ける」2級判定には「自発性の乏しさ」「金銭管理困難」「社会行動の不適切さ」が明確に要求されます。実際の審査では発作記録に加え、服薬管理状況・就労制限の具体例を詳細に記載することが重要です。


てんかんの障害者手帳等級変更の仕組み

てんかんの精神障害者保健福祉手帳の等級変更は、発作頻度・日常生活制限・治療経過の3要素を総合的に再評価して決定されます。主な変更パターンは以下の通りです。

等級変更の主な要因

  1. 症状悪化による等級上昇
    • 発作頻度増加: A/Bタイプ発作が月1回以上→1級
    • 新たな併存障害: 認知機能低下/精神症状の悪化で日常生活制限が増加
    • 治療抵抗性: 十分な治療後も発作抑制できない場合
  2. 症状改善による等級低下
    • 発作抑制成功: 2年以上発作なし→手帳対象外の可能性
    • 日常生活能力向上: 金銭管理/服薬管理が自立可能になった場合

等級変更手続きの流れ

  1. 診断書更新: 精神科医が最新の「発作記録」と「生活機能評価」を記載
    • 有効期間: 原則として申請時から3か月以内の診断書が必要[前回回答参照]
  2. 再申請提出
    • 提出先: 市区町村障害福祉課[前回回答参照]
    • 必要書類: 変更理由を明記した申請書+最新診断書
  3. 審査基準のポイント
    • 発作間欠期の評価: 発作がない期間の認知機能障害の有無
    • 就労状況: 一般就労可能か障害者雇用が必要か
    • 介護必要性: 入浴/調理時の見守り要否

等級変更の具体例

変更方向具体的事例該当等級変化
上昇部分発作が全般強直間代発作に移行(月2回発生)3級→2級
上昇発作抑制後も高度の記憶障害が持続2級→1級
低下新規抗てんかん薬で2年間発作抑制3級→対象外

注意すべきポイント

  • 診断書の重要性: 神経内科医の診断書では「日常生活制限」の記載不足で不認定リスク[前回回答]
  • 客観的証拠: 就労制限証明書/介護記録の添付が有効
  • 更新時期: 有効期限3か月前から手続き可能(有効期限切れは再申請扱い)[前回回答]

等級変更審査では、単なる発作頻度だけでなく「発作間欠期の認知機能」や「社会適応能力」が厳密に評価されます。特に2級→1級の変更では「常時介護の必要性」を立証する具体的な日常生活介助記録が必須です。


てんかん発作が頻発する場合の生活支障度

生活支障度の判定基準

  1. 発作頻度と種類
    • A/Bタイプ発作(意識障害/転倒を伴う): 月1回以上で1級認定の可能性[過去回答参照]
    • C/Dタイプ発作(意識喪失/運動喪失): 月1回以上で2級相当[過去回答]
    • 重積状態: 5分以上持続する発作は救急搬送必須
  2. 日常生活制限の具体例
    • 基本動作: 入浴・調理時の転倒リスク(常時見守り必要)
    • 社会活動: 公共交通機関の単独利用不可
    • 就労制限: 危険作業禁止・集中力持続困難

支障度の段階的分類

発作頻度生活制限レベル具体的事例
月1回以上(A/Bタイプ)重度制限常時介護要・調理禁止[過去回答]
週1回(C/Dタイプ)中度制限一人外出不可・就労制限
日数回(部分発作)軽度~中度記憶障害による金銭管理困難

重積状態のリスク

  • 身体的影響: 脳損傷・呼吸停止リスク
  • 生活制限: 入院頻発による就学/就労継続困難
  • 心理的負荷: 発作予期不安による外出制限

治療抵抗例の特徴

  • 難治てんかん: 3年間の治療でも発作持続(全患者の25%)
  • 併存障害: 認知機能低下・抑うつ症状が日常生活をさらに制限
  • 就労状況: 一般雇用困難→障害者枠就労が現実的

支援が必要な領域

  • 安全管理: 入浴監視システム・転倒防止装具
  • 就労調整: 休憩時間の柔軟設定
  • 緊急対応: 発作アラートシステムの携帯

発作が月1回以上発生する場合、金銭管理・服薬管理・危険認知能力に重大な支障が生じ、2級以上の認定基準を満たす可能性が高くなります。特に前頭葉てんかんの過運動発作(突然の叫び・暴動)がある場合は、社会生活に深刻な制約が生じます。ただし、発作間欠期の認知機能や精神状態も総合的に評価されるため、医師の診断書には具体的な日常生活制限事例の記載が不可欠です。

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