障害者雇用率制度は、事業主に対して一定割合以上の障害者雇用を義務付ける制度です。この制度の目的は、障害者に対して一般労働者と同等の雇用機会を確保することにあります。
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法定雇用率
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2025年3月現在の法定雇用率は以下の通りです。
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- 民間企業: 2.5%
- 国・地方公共団体: 2.8%
- 都道府県等の教育委員会: 2.7%
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これらの率は2024年4月から適用されています。さらに、2026年7月からは以下のように引き上げられる予定です。
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- 民間企業: 2.7%
- 国・地方公共団体: 3.0%
- 都道府県等の教育委員会: 2.9%
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雇用義務
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2025年3月現在、従業員を40.0人以上雇用している事業者は、障害者を1人以上雇用する義務があります。
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障害者のカウント方法
障害者の雇用率算定には、以下のようなカウント方法が適用されます。
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- 週30時間以上勤務の障害者: 1人としてカウント
- 週20時間以上30時間未満の短時間勤務の障害者: 0.5人としてカウント
- 重度身体障害者・重度知的障害者: 1人を2人としてカウント
- 短時間勤務の重度身体障害者・重度知的障害者: 1人としてカウント
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特例として、週20時間以上30時間未満の精神障害者は、当分の間1人としてカウントされます。
この制度は、障害者の自立と社会参加を促進し、能力を最大限に発揮できる社会を目指すための重要な施策となっています。
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2024年4月から2026年7月にかけて、障害者雇用率制度に以下の主要な改正点が導入されます。
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法定雇用率の引き上げ
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- 2024年4月から:
- 民間企業: 2.3%から2.5%に引き上げ
- 対象企業の範囲: 従業員43.5人以上から40.0人以上に拡大
- 2026年7月から:
- 民間企業: 2.5%から2.7%にさらに引き上げ
- 対象企業の範囲: 従業員37.5人以上に拡大
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障害者のカウント方法の変更
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- 2024年4月から:
- 週10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者を0.5人としてカウント
- 週20時間以上30時間未満の精神障害者を、雇入れ期間に関係なく1人としてカウント(当分の間)
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除外率の引き下げ
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2025年4月1日から:
- 各除外率設定業種の除外率を一律10ポイント引き下げ
- 新しい除外率は5%から70%の11段階に変更
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支援策の強化
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2024年4月から:
- 障害者雇用に関する相談援助サービスの導入(原則無料)
- 加齢に伴う課題に対応する新しい助成金の創設
- 既存の障害者雇用関係助成金の拡充(障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金など)
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これらの改正は、障害者の雇用機会を拡大し、企業の障害者雇用を促進することを目的としています。
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2024年4月の改正により、以下の新しい障害者雇用助成金が新設されました。
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障害者雇用相談援助助成金
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この助成金は、障害者の雇入れや雇用管理に関する相談支援を提供する事業主に対して支給されます。
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- 支給額:
- 中小企業や特定業種の事業主:最大80万円
- その他の事業主:最大60万円
- 条件:労働局から認定を受けた事業者であること
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障害者職場実習等支援事業
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この助成金は、障害者に職場実習や見学の機会を提供する事業主を支援します。
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- 支給限度額:
- 通常の事業主:最大50万円
- 認定事業主:最大100万円
- 支給額は職場実習や見学を行った日数に応じて決定されます
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中高年齢障害者雇用継続支援助成金
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35歳以上の中高年齢の障害者の雇用継続を支援するための新しい助成金です。
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- 対象:雇用後6ヶ月を超える期間が経過している35歳以上の障害者
- 目的:加齢による変化が仕事を続ける上での困難を増加させる場合に、支援措置を講じる事業主を支援
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これらの新設された助成金は、障害者の雇用機会を拡大し、事業主が直面する課題を軽減することを目的としています。具体的な申請方法や詳細な条件については、各都道府県の支部や窓口で確認することが推奨されます。
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法定雇用率の引き上げに伴い、企業には以下の義務が課されています。
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障害者雇用の拡大
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- 2024年4月から民間企業の法定雇用率が2.3%から2.5%に引き上げられ、従業員40.0人以上の企業が対象となりました。
- 2026年7月からは法定雇用率がさらに2.7%に引き上げられ、従業員37.5人以上の企業が対象となる予定です。
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雇用管理の強化
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- 障害者情報の適切な管理:
- 障害者雇用率を正確に把握するため、採用候補者と既存従業員の障害に関する情報を適切に管理する必要があります。
- 情報取得時は利用目的を明示し、本人の同意を得なければなりません。
- 障害者が働きやすい環境の整備:
- 職場における合理的配慮の提供が求められます。
- 障害者職業生活相談員の選任:
- 障害者雇用数が5名以上の場合、相談員を選任し、相談・指導を行わせる必要があります。
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報告義務
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- 毎年6月1日時点での障害者雇用状況をハローワークに報告する義務があります。
- 障害者を解雇しようとする場合は、ハローワークへの届け出が必要です。
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その他の義務
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- 障害者雇用推進者の選任(努力義務)。
- 差別禁止と合理的配慮の提供:障害を理由とする不当な差別を禁止し、社会的障壁を取り除くための個別対応や支援を行うこと。
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これらの義務を遵守し、法定雇用率を達成することが企業に求められています。未達成の場合、罰則リスクが発生する可能性があります。
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障害者雇用率制度の具体的な計算方法は以下の通りです。
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雇用義務のある障害者数の計算
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雇用義務のある障害者数 = (常用雇用労働者数 + 短時間労働者数 × 0.5) × 法定雇用率
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- 常用雇用労働者:週所定労働時間が30時間以上の者
- 短時間労働者:週所定労働時間が20時間以上30時間未満の者
- 法定雇用率:2025年3月現在、民間企業は2.5%
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計算結果の小数点以下は切り捨てます。
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障害者のカウント方法
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- 原則:
- 常時雇用労働者:1人分
- 短時間労働者:0.5人分
- 特例:
- 重度身体障害者・重度知的障害者:1人を2人分
- 重度身体障害者・重度知的障害者の短時間労働者:1人分
- 短時間労働の精神障害者:一定の条件を満たす場合は1人分、それ以外は0.5人分
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民間企業(従業員200人)の場合:
- 常用雇用労働者:150人
- 短時間労働者:50人
- 法定雇用率:2.5%(2024年4月時点)
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この企業は少なくとも4人の障害者を雇用する必要があります。
企業は自社で雇用すべき障害者の数を正確に把握し、法定雇用率を達成するための計画を立てることができます。
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国や地方公共団体の法定雇用率は、以下のように段階的に引き上げられています。
- 2025年3月現在:2.8%
- 今後の予定:
- 2026年7月1日から:3.0%
- この引き上げは、障害者の雇用機会を拡大し、公的機関が率先して障害者雇用を推進する目的で実施されています。民間企業の法定雇用率よりも高く設定されており、公的機関には更に高い水準の障害者雇用が求められています。
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法定雇用率の引き上げは、労働市場に以下のような影響を与えると考えられます。
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障害者雇用の拡大
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- 雇用純増の必要性:
- 2026年7月までに約12.2万人の障害者雇用純増が必要となります1。
- 直近5年の平均純増数(約2万人/年)の2倍のペースで雇用を増やす必要があります。
- 採用対象の変化:
- 精神障害者(発達障害者含む)の就職件数が10年間で約2.5倍に増加し、就職者全体の半数以上を占めています。
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企業への影響
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- 雇用義務の拡大:
- 中小企業を含む、より多くの企業が障害者雇用の義務対象となります。
- 従業員数40.0人以上の企業が対象となり、2026年7月からは37.5人以上に拡大される予定です。
- 採用・定着の課題:
- 精神障害者の半数以上が1年間で退職しているため、定着支援が重要になります。
- 企業は多様な障害者のニーズに対応するための採用戦略や職場環境整備が必要となります。
- コストと人的資源の負担:
- 特に中小企業にとって、障害者の採用と支援に関するコストや人的資源の確保が大きな負担となる可能性があります。
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労働市場全体への影響
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- 就労機会の拡大:
- 障害者、特に精神障害者や発達障害者の就労機会が拡大すると期待されます。
- 雇用の質の向上:
- 企業は雇用した障害者の職業能力開発と向上に取り組む必要があり、雇用の質が問われる時代となります。
- 共生社会実現への前進:
- 法定雇用率の引き上げは、共生社会実現のためのポジティブな変化として捉えられています。
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これらの影響により、労働市場は障害者雇用の拡大と質の向上に向けて大きく変化することが予想されます。