世界一障害当事者に優しい国はどこ?

「世界一障害当事者に優しい国」を決めるのはなかなか難しいことです。文化や価値観の違いから、評価の視点が異なるからです。とはいえ、特に先進的な取り組みで知られる国々をいくつかご紹介します。

北欧諸国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク

特徴: 高い福祉水準と平等を重視する社会

- 法律・制度: 障害者権利条約を基にした法律が整備されており、教育、雇用、住居など全ての分野で平等な機会を提供。公共交通機関や公共施設は完全にバリアフリー。

- 教育: 包括教育が徹底され、障害のある子どもも通常の学校で学ぶことが奨励されています。特別支援教育が必要な場合でも、個別の学習計画が提供されます。

- 生活環境: 高度に進化した福祉サービスが税金でまかなわれ、無料または低料金で利用可能。パーソナルアシスタントのサービスが充実しています。

例: スウェーデンでは、障害のある人が仕事や日常生活を支えるための個人助手を雇う費用を国が負担します。

アメリカ

特徴: 法的保護が強く、障害者の権利を重視

- 法律: 1990年に制定された「アメリカ障害者法(ADA)」は、雇用、教育、交通、公共施設での差別を禁じています。建物や道路のアクセシビリティ基準が厳格。

- 雇用: 企業には障害者を雇用する義務があり、合理的配慮(例: 職場環境の調整)が求められます。

- 社会的認識: 障害を特別視せず、社会の多様性の一部として受け入れる文化が広がっています。

例: 大学や職場では、障害を持つ学生や労働者のために、筆記代行やテクノロジー支援が一般的です。

カナダ

特徴: 多文化主義と平等主義の国

- 法律: 障害者法や雇用機会均等法により、公共・民間部門での障害者差別が禁止されています。

- 福祉: パーソナルケアやヘルスケアサービスが広範囲に提供され、自治体単位での支援が充実しています。

- 教育: 障害者を支援するテクノロジーが普及しています。

- インフラ: 公共の建物や交通機関はバリアフリー設計が徹底されています。

例: カナダでは、障害者スポーツが盛んで、パラリンピックの選手育成にも力を入れています。

日本

特徴: 法制度の進展と日常生活での実践的支援

- 法律: 障害者基本法やバリアフリー法などが整備され、社会参加を促進。障害者雇用促進法で企業に一定割合の障害者雇用が義務付けられています。

- インフラ: 駅や商業施設のエレベーター、視覚障害者用の点字ブロックなどが広く普及。

- 教育: 特別支援学校だけでなく、インクルーシブ教育(通常学級での受け入れ)も進行中。

例: 鉄道駅では駅員が車いす利用者を手助けするサービスが定着しています。

ドイツ

特徴: 障害者の社会参加を重視する政策

- 法律: 障害者平等法(BGG)に基づき、生活のあらゆる分野での差別を禁止。障害者支援法(BTHG)で、個々のニーズに合わせた支援を提供。

- 雇用: 企業は障害者雇用率を達成する義務があり、達成できない場合は罰金。

- 教育・福祉: 障害者向けの職業訓練施設や生活支援施設が広範囲に整備されています。

例: 公共交通機関では、事前予約で利用できるバリアフリータクシーサービスが一般的です。

総合的な評価

- 北欧諸国: 全体的な生活の質が高い。税金が高い分、福祉サービスが非常に充実。

- アメリカ: 法的保護が強力で、多様性を重視する文化が進んでいる。

- カナダ: 障害者支援と社会の包摂がバランスよく行われている。

- 日本: 制度とインフラが整ってきており、特に公共交通のバリアフリーが進んでいる。

- ドイツ: 個別対応を重視し、実際の生活に密着した支援が提供される。

障害当事者に優しくない国という視点

法律の未整備、社会的な認識不足、福祉サービスの欠如など、複数の要素で評価されますが、多くの国が国際的な圧力や経済発展に伴い改善を目指しています。

- 発展途上国: 経済基盤の弱さ、インフラの未整備、社会的偏見の強さが課題。

- 中東の一部諸国: 文化や宗教の影響、法整備の遅れが見られることも。

- アジアの一部諸国: 急速な経済発展と制度整備の不一致。

- 東欧の一部諸国: 旧共産圏の影響と経済的制約が影を落としています。

国による違いが出る理由

- 経済力: 豊かな国は福祉や医療に多くの予算を割り当てる余裕があり、バリアフリー化や支援サービスが充実している。

- 法整備と政治的意思: 障害者権利条約(CRPD)への加盟や国内法の整備状況により、障害者の権利が守られる程度が変わる。

- 歴史と文化: 障害に対する「社会的責任」として支援を強調する文化もあれば、個人や家庭の問題と捉える文化もある。

- 社会の意識と教育: 高度な教育が普及している国では、障害者の権利や平等に対する意識が高い傾向があります。

- インフラ整備の進捗: 先進国は都市部を中心にバリアフリー化が進んでいるが、発展途上国では物理的な障壁が多い。

- 国際的な影響とグローバル化: 国際条約の影響やNGOの活動により、福祉の遅れている国々でも改善が見られるようになっています。

まとめ

国による違いが出る理由は経済力、法律、文化、歴史、教育、インフラ整備の差に起因しています。しかし、国際的な動きやグローバルな意識の高まりにより、すべての国が障害者支援の重要性を認識し、少しずつ改善に取り組んでいます。