国立障害者リハビリテーションセンターが対象とする疾患は多岐にわたります。以下に主な疾患を挙げます。
- 脳血管疾患:脳卒中などによる後遺症
- 運動器疾患:骨折や関節疾患など
- 脊髄損傷:交通事故やスポーツ事故による損傷
- 切断:四肢の切断に伴うリハビリテーション
- 神経難病:筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病など
- 高次脳機能障害:認知機能の低下を伴う疾患
- 失語症:言語能力の障害
- 構音障害:発音に関する障害
- 嚥下障害:飲み込みに関する問題
- 聴覚障害・難聴:聴覚に関する障害
- 言語発達遅滞:言語の発達が遅れること
- 吃音:言葉が詰まることによる発話の障害
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このセンターでは、これらの疾患に対して、リハビリテーションや医療的な支援を提供しています。また、患者のニーズに応じて、医師や理学療法士、作業療法士などの専門家がチームを組んで治療を行います。
国立障害者リハビリテーションセンターは、1979年に設立されました。このセンターは、障害のある方々の自立及び社会参加を支援するために設置され、リハビリテーションの中核機関としての役割を果たしています。
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国立障害者リハビリテーションセンターでは、さまざまなリハビリテーションサービスを提供しています。以下に主なリハビリテーションの内容を示します。
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- 医学的リハビリテーション:障害のある方々に対して、医師や理学療法士、作業療法士などの専門家がチームを組み、個別のニーズに応じた治療を行います。これには、機能回復訓練や日常生活訓練が含まれます。
- 社会的職業的リハビリテーション:患者が社会復帰できるように、職業訓練や就労支援を行います。具体的には、職場での適応訓練や、必要なスキルを身につけるための支援が行われます。
- 自立支援訓練:日常生活に必要な動作や生活スキルを向上させるための訓練を提供します。これには、食事、入浴、移動などの基本的な生活動作の訓練が含まれます。
- 専門的な治療:脊髄損傷や脳卒中、切断などの特定の疾患に対する専門的なリハビリテーションも行われています。これには、理学療法、作業療法、言語療法などが含まれます。
- 家族への支援:患者の家族に対しても、介助方法の指導や、社会生活に必要な情報提供を行い、患者の生活を支えるための支援を行います。
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このように、国立障害者リハビリテーションセンターは、障害のある方々が自立し、社会に参加できるように多角的なリハビリテーションを提供しています。
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国立障害者リハビリテーションセンターで提供される医学的リハビリテーションの具体的な手法には、以下のようなものがあります。
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- 理学療法:身体機能の回復を目的とした運動療法やマッサージ、物理療法(温熱療法や電気療法など)を用いて、筋力や柔軟性を向上させます。
- 作業療法:日常生活に必要な動作を訓練することで、患者が自立した生活を送れるように支援します。具体的には、食事、入浴、着替えなどの基本的な活動を含みます。
- 言語療法:言語やコミュニケーションに障害がある患者に対して、発音や言語理解、会話能力を改善するための訓練を行います。
- 嚥下訓練:飲み込みに問題がある患者に対して、嚥下機能を改善するための訓練を行います。これには、食事の摂取方法や嚥下の技術を指導することが含まれます。
- 心理的支援:リハビリテーションの過程で、患者の心理的なサポートも重要です。心理士によるカウンセリングや、ストレス管理の技術を提供します。
- 多職種連携:医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、さまざまな専門職がチームを組んで、患者のニーズに応じた包括的な治療を行います。
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これらの手法は、患者の状態やニーズに応じて組み合わせて実施され、個別のリハビリテーションプランが策定されます。
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国立障害者リハビリテーションセンターの医療チームに含まれる専門職
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国立障害者リハビリテーションセンターの医療チームは、多職種によるチーム医療を実践しており、以下のような専門職が含まれています。
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- 医師
- 看護師
- 理学療法士(PT)
- 作業療法士(OT)
- リハビリテーション体育専門職
- 言語聴覚士(ST)
- 視能訓練士
- 臨床心理士
- 医療社会事業専門職(医療ソーシャルワーカー)
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これらの専門職が連携し、診断・治療および医学的リハビリテーションを行っています。また、患者のニーズに合わせて家屋改造や福祉用具の紹介、家族への介助法指導、復職や職業訓練など、退院後の社会生活に必要な支援も積極的に行っています。
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参考:リハビリテーション部門の構成
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- 理学療法
- 作業療法
- リハビリテーション体育
- 言語聴覚療法
- ロービジョン訓練
- 臨床心理
- 義肢装具療法
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このように、医療と福祉の両面から総合的なサポートを提供する体制が整えられています。
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国立障害者リハビリテーションセンターの義肢装具療法の内容
義肢装具療法は、患者の身体機能回復と日常生活の向上を目的に、多角的な支援を提供しています。具体的な内容は以下の通りです。
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1. 義肢・装具の適応評価と製作
適応評価:義手・義足・装具の必要性を医学的・機能的な観点から評価。
個別製作:患者の断端形状や生活環境に合わせた義肢装具を義肢装具士が石膏採型で作成。
特殊症例対応:多肢切断・重複障害・少数症例など民間では対応困難なケースへの対応。
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2. 筋電義手の試用評価
先進技術の導入:筋電位を利用した義手の性能評価と適合指導を実施。
情報共有体制:高機能義肢の有効利用促進のため、患者同士の交流機会を重視。
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3. 多職種連携によるリハビリテーションプログラム
POカンファレンス:義肢装具士・医師・理学療法士が協働し、断端管理・義足調整方針を決定。
段階的訓練
断端管理:シリコーンライナーを使用した圧迫療法と自己管理指導。
歩行練習:平行棒内での重心移動訓練から屋外歩行まで段階的に実施。
日常生活動作(ADL)訓練:義足装着下での方向転換・階段昇降など実践的動作の習得。
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4. 退院後の継続支援
ソケット調整:断端のシュリンケージ(萎縮)に伴う定期的な適合調整。
生活環境整備:福祉用具の選定・家屋改造アドバイスを医療ソーシャルワーカーと連携して実施。
特徴的な取り組み
高齢糖尿病患者への対応:切断肢の血流状態・全身管理を重視し、看護師と連携した断端衛生指導を徹底。
心理的支援:臨床心理士が義足使用への心理的抵抗感の軽減を支援。
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このように、同センターでは「医療的適合」と「生活実践」の両面から、患者の社会復帰を包括的に支える体制が整えられています。
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国立障害者リハビリテーションセンターのロービジョン訓練の実施方法
国立障害者リハビリテーションセンターのロービジョン訓練は、多職種連携チームによる包括的な支援が特徴です。具体的な訓練内容と実施方法は以下の通りです。
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1. 訓練の流れ
- 初回評価
- 視機能検査:視力・視野・コントラスト感度・まぶしさの程度を測定。
- 生活課題の聴取:文字の読み書き困難・歩行時の不安・PC操作の不便さなど、具体的な悩みを把握。
- 個別プログラム立案
- 眼科医・視能訓練士・生活訓練専門職・ソーシャルワーカーが協働で計画作成。
- 目標設定例:
- 「新聞を自力で読めるようになる」
- 「屋外を白杖なしで安全に歩行する」
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2. 具体的な訓練内容
視覚補助具の選定と使用訓練
- 拡大鏡(ルーペ):眼鏡式/手持ち式/卓上式から生活スタイルに合わせ選択。
- 拡大読書器:文字サイズ/コントラスト/背景色を調整可能な据え置き型/携帯型を試用。
- 遮光眼鏡:
- レンズ色(オレンジ/イエロー/グレー)を症状に応じて選定
- まぶしさ軽減とコントラスト改善を同時達成。
- 単眼鏡:
- 黒板/駅の案内表示など遠方視認用
- 倍率(2~8倍)と操作性を考慮した選択。
実践的リハビリテーション
- 歩行訓練:
- 白杖を使用した段差検知技術
- 人混みでの安全移動技術。
- PC操作訓練:
- 画面拡大ソフト/音声読み上げソフトの習得
- キーボードショートカットの効率的な活用。
- 点字訓練:
- 触覚を使った情報取得技術の習得
- 緊急時連絡先の点字メモ作成。
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3. 社会復帰支援
- 制度相談:
- 身体障害者手帳(視覚障害)の申請サポート
- 障害年金/補装具費支給制度の活用指導。
- 環境調整:
- 家庭照明の照度/配置の改善提案
- 職場での合理的配慮の獲得支援。
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4. 専門職連携の特徴
- 眼科医:疾患の進行管理と医学的アドバイス。
- 視能訓練士:補助具の適合評価と基本操作指導。
- 生活訓練専門職:
- 調理/洗濯などの家事動作の効率化指導
- 公共交通機関の利用訓練。
- ソーシャルワーカー:
- 地域支援サービスとの連絡調整
- 心理的サポートのコーディネート。
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5. 特徴的な取り組み
- 実習生受け入れ:全国の視能訓練士養成校から実習生を受け入れ、最新技術を伝承。
- 症例別アプローチ:
- 糖尿病網膜症患者には「血糖値管理」と「視機能維持」を併せた指導
- 網膜色素変性症には「暗所適応訓練」を重点実施。
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この訓練体系により、単なる「見え方の改善」ではなく、「生活の質そのものの向上」を目指した支援が行われています。