地域障害者職業センターの主な役割
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地域障害者職業センターは、障害者の職業的自立を支援する専門機関で、以下の活動を行います。
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- 職業リハビリテーション:適性検査・職業評価から個別支援計画の作成、職業訓練(作業体験・講習)、履歴書作成・面接練習までの一貫した支援
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- ジョブコーチ支援:職場訪問を通じた定着支援(業務の調整や職場環境の改善提案)
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- リワーク支援:メンタル不調からの職場復帰を目的としたプログラム
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- 企業支援:障害者雇用に関する相談対応・職場環境整備の助言
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- 地域連携:医療・福祉機関や他の就労支援機関との連携調整
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ハローワークとの違い
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両者の役割は明確に異なります。
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比較項目 | 地域障害者職業センター | ハローワーク |
主な機能 | 職業リハビリテーション(訓練・適応支援) | 職業紹介・求人仲介 |
支援内容 | 個別の職業評価・職場定着支援 | 応募書類作成支援・模擬面接 |
専門性 | 障害者職業カウンセラー・ジョブコーチ常駐 | 障害者専門相談窓口設置 |
連携先 | 医療機関・福祉施設との協働 | 職業センター・なかぽつとの連携 |
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ハローワークは求職活動の窓口として機能するのに対し、地域障害者職業センターは就労前の能力開発から職場適応までを専門的に支援します。両機関は連携して包括的な就労支援を提供しますが、役割分担が明確に異なる点が特徴です。
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地域障害者職業センターの職業リハビリテーションは、以下の流れで進められます。
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1. 事前相談・予約
最寄りのセンターに連絡し相談日を予約。電話でも希望内容を伝えられます。
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2. 初回面談・職業評価
障害者手帳や診断書を提示し、障害特性・職歴・生活歴をヒアリング。心理テストや実作業を通じて適性・ストレス耐性・作業能力を分析。
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3. 個別支援計画策定
職業カウンセラーと協力し、目標職種・必要な訓練内容・期間を明記した計画を作成。例:「報告の仕方の改善」「休憩の取り方の習得」など具体的課題を設定。
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4. 職業準備訓練
・作業体験:ピッキング/部品組立等の実践を通じた作業遂行力向上
・グループワーク:職場想定の模擬コミュニケーション練習(報告・質問の仕方)
・講習:ストレスマネジメント・労働マナー研修
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5. 就職活動支援
・履歴書作成指導・模擬面接
・ハローワーク連携による求人紹介
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6. 職場定着支援
ジョブコーチが職場訪問し、業務調整・環境整備提案。報告ルールの見直しや休憩スペース設置等を実施。
期間:標準的に3ヶ月間、必要に応じて延長可能。訓練は週5日・1日6時間程度の事例も参照されますが、地域センターでは柔軟な対応が基本です。
特徴:単なるスキル訓練ではなく「労働習慣の定着」「障害特性に合わせた働き方の習得」に重点。企業への環境整備提案も並行して実施。
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職業評価の具体的な内容
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職業評価は障害者の職業的特性を多角的に分析するプロセスで、以下の要素から構成されます。
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1. 評価の4大側面
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- 身体的側面:作業持久力・手指巧緻性・視聴覚機能など、職務遂行に必要な身体能力の測定
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- 精神的側面:数的処理能力・注意力持続時間・ストレス耐性などの認知特性分析
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- 社会的側面:報告連絡の適切性・協調性・金銭管理能力など職場適応力の評価
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- 職業的側面:作業精度・効率性・工具操作技能などの実践的能力測定
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2. 主な実施方法
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- 面接・調査:職歴・生活歴の聞き取り、心理社会的要因(家族の協力度・就労動機)の把握
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- 標準化検査:
- 厚生労働省編「一般職業適性検査(GATB)」:9種類の基礎適性測定
- 「VPI職業興味検査」:職業選択傾向の分析
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- 実践的評価:
- ピッキング/組立作業などの模擬業務による作業遂行能力測定
- ロールプレイ形式の報告練習・トラブル対処シミュレーション
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3. 評価ツール
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- 職業能力評価シート:
- チェックリスト形式で知識/技能/職務行動をレベル別に評価
- 本人と支援者の認識差異を可視化する「ダブルチェック方式」
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- 心理テストバッテリー:
- ストレス反応パターン・失敗時の対応特性を分析する心理検査
- 作業中の集中力持続時間を計測する観察記録
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4. 評価結果の活用
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- 個別支援計画作成:
- 得意分野を活かした職種提案(例:データ入力職→数的処理能力活用)
- 職場環境調整提案(休憩頻度・作業指示方法の具体例提示)
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- 企業連携資料:
- 配慮事項を「業務遂行特性シート」に可視化して企業へ提供
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職業評価は単なる適性判定ではなく「働きやすさの設計図」作成が目的で、医学的診断とは異なる職業特性に特化した分析が特徴です。
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職業評価で使用される主な検査・調査手法
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障害者の職業評価では、多角的なアセスメントツールを組み合わせて実施されます。
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1. 標準化検査
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- 一般職業適性検査(GATB)
- 測定項目:知的能力/言語能力/数理能力/空間判断力など9分野
- 形式:紙筆検査(立体図判断・計算問題)+器具検査(組み立て作業)
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- VPI職業興味検査
- 特徴:ホランド理論に基づく「現実型・研究型・芸術型」など6興味領域の分析
- 心理検査
- 内容:ストレス耐性・失敗対応特性の測定(例:内田クレペリン検査で作業持続力分析)
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2. 観察評価
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- ロールプレイ評価:
- 報告連絡の適切性を模擬職場環境で評価
- トラブル対処シミュレーション(例:クレーム対応練習)
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- 実作業評価:
- ピッキング/部品組立作業での正確性・効率性測定
- 作業中の集中力持続時間の計測
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3. 面接・調査
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- 職業歴分析:過去の職務内容・離職理由の詳細聞き取り
- 生活歴調査:通院状況・家族支援体制の把握
- 希望調査:「将来どのような生活を送りたいか」の意向確認
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4. 補助ツール
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- 職業能力評価シート:
- 知識/技能/職務行動を5段階で評価するチェックリスト
- 支援者と本人の認識差異を可視化するダブルチェック方式
- 業務特性分析表:
- 得意不得意を「報告頻度」「作業切り替え能力」など具体項目で分類
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5. 実践的評価
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- 職場実習評価:
- 実際の職場環境下での適応能力観察
- 休憩の取り方・同僚とのコミュニケーション様式の分析
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これらの手法は単独ではなく、「検査結果×観察記録×本人希望」の三角測量で総合評価が行われます。特に障害者支援では、標準検査だけでなく「職務遂行特性」に特化した実践的評価が重視される点が特徴です。
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職業評価で使用される主な心理検査の種類
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障害者の職業評価では、以下の心理検査が組み合わされて実施されます。
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1. 職業興味検査
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- VPI職業興味検査
- 特徴:160の職業項目に対する興味度を測定し、ホランド理論に基づく6類型(現実型・研究型・芸術型など)を分析。
- 実施方法:職業リストへの興味有無を回答し、適職領域を特定。
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2. 人格検査
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- 質問紙法
- Y-G性格検査:12の特性尺度で性格パターンを分類(例:情緒安定性・社交性)。
- SHL職業適性検査(OPQ32):32の行動特性を「人間関係・思考様式・感情状態」の3領域で測定。
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- 投影法
- ロールシャッハテスト:インクの染みへの反応から無意識の傾向を分析。
- TAT(主題統覚検査):絵画への物語作成を通じて動機や欲求を把握。
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- 作業検査法
- クレペリン精神作業検査:連続計算による作業効率・注意力持続力を測定。
- ベンダー・ゲシュタルトテスト:図形模写で視覚運動協応性を評価。
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3. 認知能力検査
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- 内田クレペリン検査[過去回答参照]:数字連続加算による集中力・疲労回復パターンを分析。
- WAIS-IV(※主に知能検査だが応用):言語理解・知覚推理などの認知特性を測定。
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4. 適性検査
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- 一般職業適性検査(GATB)[過去回答参照]:9種類の基礎能力(知的能力・空間判断力など)を測定。
- キャリパープロファイル:職務遂行に必要な特性を行動ベースで評価。
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5. ストレス関連検査
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- SDS(うつ性自己評価尺度):抑うつ傾向の程度を数値化。
- ストレス耐性検査[過去回答参照]:失敗時の対応特性をシナリオベースで分析。
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特徴的な実施方法
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・テストバッテリー方式:複数検査を組み合わせ、認知特性・性格傾向・職業興味を多角的に評価。
・行動観察連動:検査結果を実際の作業場面での行動観察と照合し、職務遂行特性を総合判断。
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職業評価では、単一の検査ではなく「興味×能力×性格特性」の相互作用を分析するため、標準化検査と実践的評価が併用されます。特に障害者支援では、作業検査法による客観的データ収集が重視される点が特徴です。