片手不自由な障害者が右手なしでは出来ないこと。

片手が不自由で右手が使えない方ができないことは、日常生活の中にたくさんあります。簡単なことから挙げさせていただきます。

日常生活の基本的な動作

  • 両手を使う動作:
    • 靴紐を結ぶ(特に複雑な結び方)
    • ボタンを留める、ファスナーを上げる(特に細かいもの)
    • ネクタイを結ぶ
    • 髪をブラシでとかす、まとめる(片手では難しいヘアスタイル)
    • 洗濯物を干す(ピンチで留めるなど)
    • 食器を洗う(特に大きい皿や鍋を支えながら洗う)
    • 包丁で食材を切る(片手で食材を固定するのが難しい)
    • ペットボトルや瓶の蓋を開ける(特に固い場合)
    • カバンから物を取り出す、入れる(片手でカバンを支えながら)
    • ドアノブを回しながらドアを開ける(片手で支えるのが難しい場合)
  • 道具を使う動作:
    • はさみを使う(紙を切る、テープを切るなど)
    • 缶切り、栓抜きを使う
    • 針に糸を通す、裁縫をする
    • ホチキスを使う
    • 鍵を回す(特に固い鍵や、複数の鍵を同時に扱う場合)
    • 楽器を演奏する(特に両手を使う楽器、ピアノ、ギターなど)
  • その他:
    • 片手で傘をさしながら、もう片方の手で荷物を持つ
    • 服の袖を通す(特に右手側の袖)
    • トイレットペーパーを交換する(芯を外して新しいものをセットする)
    • スマホやタブレットの両手操作が必要なアプリを使う

仕事や趣味の動作

  • パソコンのタイピング(両手を使わないと効率が悪い)
  • 図面を描く、製図をする(定規やコンパスを使う場合)
  • スポーツ(両手を使う球技など)
  • カメラの操作(特に複雑な設定変更やレンズ交換)

上記は一例であり、個人の状況や工夫によってできることは異なります。しかし、日常生活の中で無意識に行っている両手を使った動作が、片手が不自由な方にとっては大きな障壁となることをご理解いただければ幸いです

事故や病気で右手が使えなくなると、多くの人にとって最初に直面する大きな問題の一つが「字が書けなくなる」ことです。

ほとんどの人は利き手である右手で文字を書くことに慣れているため、それが使えなくなると、以下のような状況に陥りやすくなります。

  • 筆記困難: 普段通りのスピードや精度で文字を書くことができなくなります。特に署名など、正確さや個人を特定する要素が必要な場面では大きな問題となります。
  • コミュニケーションへの影響: 手書きでのメモ、書類への記入、ハガキの作成など、日常の様々な場面で不便が生じ、コミュニケーションが滞る可能性があります。
  • 精神的負担: 長年慣れ親しんだ動作ができなくなることへのフラストレーションや、自分の能力が制限されることへの心理的ショックは非常に大きいです。
  • 学業や仕事への影響: 学生であればノートを取ること、社会人であれば書類作成など、筆記が必須の場面では深刻な支障が出ます。

しかし、現代では右手を使えなくなったとしても、字を書くための様々な工夫や代替手段があります。

  • 左手での練習: 多くの人が左手での筆記練習から始めます。最初はぎこちなくても、継続的な練習でかなり上達する方もいます。
  • 筆記補助具の利用: 持ちやすいようにグリップが太くなった鉛筆やペン、手が滑らないように固定するシートなどがあります。
  • パソコンやタ・ブレットの活用:
    • 音声入力: 話した言葉を文字に変換してくれる機能は非常に便利です。
    • ソフトウェアキーボード: 画面上のキーボードを片手で操作して入力します。
    • 手書き認識機能: タブレットなどで、片手で書いた文字をデジタルデータとして認識させることも可能です。
    • 定型文やテンプレートの活用: 頻繁に使う文章は事前に登録しておくことで入力の手間を省けます。
  • スマートフォンでの入力: フリック入力や音声入力、手書き入力など、片手で操作しやすい入力方法を活用します。
  • コミュニケーションツールの利用: メール、SNS、チャットアプリなどを積極的に活用することで、手書き以外の方法で情報を伝達できます。

右手が使えなくなることは大きな変化ですが、様々な支援やツールを活用することで、筆記やコミュニケーションの障壁を乗り越えることが可能です。 専門の作業療法士に相談することで、個々の状況に合わせた具体的な練習方法や補助具、ツールの紹介を受けることができます。

片手が不自由な方が日常生活の動作を改善するための方法は、大きく分けて以下の3つが挙げられます

  1. 自助具(便利グッズ)の活用
  2. 動作の工夫
  3. 環境の整備

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 自助具(便利グッズ)の活用

様々な場面で片手での操作を補助する専用の道具が開発されています。

  • 食事関連:
    • 滑り止めマット: 食器の下に敷くことで、食器が動くのを防ぎ、片手でも食べ物をすくいやすくします。
    • 縁が内側に反った食器(自助食器): スプーンで食べ物をすくう際に、縁に当たって食べ物が逃げないように工夫されています。
    • 持ち手が太いスプーン・フォーク: 握りやすい形状で、力が入りにくい方でも安定して持てます。
    • トング型のお箸: 挟みやすく、片手でも使いやすいお箸です。
    • ボトルオープナー・缶切り: 片手で簡単に蓋やプルタブを開けられる専用の道具があります。
    • ワンハンド調理板: 食材を固定できる釘や吸盤が付いたまな板で、片手で安全に野菜などを切ることができます。
    • 片手で切れるラップホルダー・キッチンペーパーホルダー: 固定して片手で簡単に引き出して切ることができます。
    • パックハンドル: 紙パックの飲み物を注ぐ際に、手首への負担を軽減します。
    • 電動ミル: 自動で調味料を挽いてくれるので、片手で簡単に使えます。
  • 着替え関連:
    • ボタンエイド・ファスナーエイド: ボタンを留めたり、ファスナーを上げ下げしたりするのを補助する道具です。
    • ソックスエイド: 靴下を片手で履くのを補助する道具です。
    • 片手で履ける靴下・靴: 履き口が広く、手を使わずに履けるタイプなどがあります。
    • マジックテープやスナップボタン式の衣類: ボタンやファスナーの代わりに、着脱しやすいように加工された衣類を選ぶのも有効です。
  • 身だしなみ・衛生関連:
    • 片手用爪切り(台付き爪切り): 台に手を固定して、片手で爪を切ることができます。電動の爪削りも便利です。
    • 柄の長いボディブラシ: 背中など、手が届きにくい場所を洗うのに便利です。
    • 輪状タオル: タオルの両端を縫い合わせて輪にすることで、片手でも体を洗いやすくなります。
    • ワンタッチペーパーホルダー: 片手で簡単にトイレットペーパーをカットできます。
  • その他:
    • マジックハンド(リーチャー): 高い場所や床に落ちたものを拾うのに便利です。
    • 滑り止めシート・ゴム手袋: 物を掴んだり、固定したりする際に滑り止めとして使えます。
    • スベラナイト: 紙の下に敷くことで、片手で字を書いたり消しゴムを使ったりする際に紙が滑るのを防ぎます。

2. 動作の工夫

自助具がなくても、普段の動作に少し工夫を加えることで、片手でもできることが増えます。

  • 固定する:
    • 物を体に挟む、机の角に固定する、壁に押し当てるなど、動かないように固定することで、片手で作業しやすくなります。
    • 食器を洗う際に、シンクの底に滑り止めマットを敷き、食器を固定して洗う。
    • ペットボトルを開ける際に、引き出しの隙間に挟んで固定し、体で押さえながら開ける。
  • 簡単な方法に切り替える:
    • 複雑なボタンの服は避け、かぶり式の服やマジックテープ式の服を選ぶ。
    • 靴紐を結ぶのが難しい場合は、ゴム紐やベルクロ式の靴を選ぶ。
    • 包丁を使うのが難しい場合は、キッチンバサミを活用したり、カット済みの食材を利用したりする。
    • 食材を柔らかくしてから切る(例:野菜を先に茹でる)。
  • 道具の持ち方を変える:
    • ハサミを机に固定して紙を動かす、または刃を開いた状態で固定し、紙を押し当てて切る。
    • 両手で持つ道具を、片手で扱えるように工夫する(例:片手で持てる電気ケトルを選ぶ)。
  • 姿勢の調整:
    • 長時間立って作業するのが難しい場合は、座面が高い椅子を使ったり、カウンターに寄りかかったりするなど、楽な姿勢で作業できる工夫をします。

3. 環境の整備

家の中の配置や設備の改善も、片手での生活を楽にする上で重要です。

  • 物の配置:
    • よく使うものは、片手で届きやすい高さや場所に収納する。
    • シンク、調理台、コンロの配置を、片手で効率的に作業できるように見直す(L字型のキッチンなど)。
    • ワゴンの活用など、移動の無駄をなくす工夫をする。
  • 設備の変更:
    • 蛇口をレバー式やセンサー式にする。
    • 食器洗い乾燥機を導入する。
    • ポンプ式の洗剤ボトルを使用する。
    • 段差をなくす、滑りにくい床材を選ぶ。

これらの改善方法は、ご自身の生活スタイルや身体状況に合わせて組み合わせることが重要です。また、専門の作業療法士や福祉用具の専門家に相談することで、より適切なアドバイスや情報が得られることもあります。

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