「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)は、障害のある人が働きやすい環境を整え、雇用の機会を増やすための大切な法律です。この法律の目的は、障害のある人が職業生活に参加できるように支援し、職業の安定と自立を応援することにあります。
「働く」ことは、私たち一人ひとりにとって、生活を支えるだけでなく、自己実現や社会参加にもつながる大切な活動です。障害のある人も、それぞれの個性や能力を活かして、自分らしく働くことができる社会を目指して、障害者雇用促進法はさまざまな取り組みを進めています。
障害者雇用促進法のポイント
障害者雇用促進法の主な内容は以下の通りです。
- 法定雇用率: 企業に対して、従業員数に応じて一定の割合で障害当事者を雇用することを義務付けています。この割合は企業の規模や業種によって異なります。
- 障害者雇用納付金制度: 法定雇用率を達成できない企業は、納付金を支払う必要があります。逆に、法定雇用率を超えて雇用している企業には、調整金が支給される仕組みです。
- 雇用環境の整備: 企業が障害当事者の雇用を促進するために、職場環境の改善、通勤や作業のサポート、合理的配慮の提供などが推進されています。
- 支援措置: 障害当事者が職業訓練や能力開発の機会を得られるよう、訓練制度やキャリア形成支援、職業紹介などのサポートが行われています。
これらの取り組みを通じて、障害当事者が働くことで自立し、社会に参加する機会を増やし、雇用の安定と経済的な自立を実現することを目指しています。また、企業の側も障害当事者を受け入れやすくするための支援が提供されています。
どんな仕事があるの?障害当事者の多様な働き方
障害当事者の雇用先は幅広く、障害の内容や個人のスキル、適性に応じて様々な職種が用意されています。代表的な雇用先と仕事内容を見ていきましょう。
1. 一般企業: 多くの企業が法定雇用率の達成を目指し、障害当事者の雇用に積極的に取り組んでいます。
- 業種例: 事務職、製造業、小売業、IT企業、金融業など
- 職種例: 事務補助、製造ライン、清掃業務、データ入力、販売接客、テレマーケティングなど
2. 特例子会社: 親会社が障害当事者の雇用を促進するために設立した子会社です。働きやすい環境が整備され、手厚いサポート体制が整っています。
- 例: 製造・軽作業、データ入力、清掃、食堂業務、農業など
3. 就労継続支援事業所(A型・B型): 一般企業への就労が難しい障害当事者に対して、就労の機会を提供する事業所です。
- A型事業所: 事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の給料を受け取りながら働くことができます。一般企業に近い形で働きながら支援を受けられるため、将来的な一般就労を目指すステップとなります。
- B型事業所: 雇用契約を結ばずに、作業を通して工賃(報酬)を受け取る形態です。体調やペースに合わせて無理なく働くことができ、就労スキルの習得を主な目的としています。
4. 公共機関・自治体: 国や地方自治体、公共団体も障害当事者の雇用促進に取り組んでいます。
- 例: 市役所、都道府県庁、税務署などでの事務職や受付業務など
5. 社会福祉法人・NPO法人: 障害者支援を目的とした活動を行っており、作業所や福祉施設などで働く機会があります。
6. 農業や福祉系の就労支援事業: 農業分野でも障害当事者の雇用が進んでいます。
- 例: 農業法人、障害当事者の雇用を推進する福祉農園など
7. 在宅ワーク・リモートワーク: 通勤が難しい方や体調に不安がある方でも、在宅でできる仕事が増えています。
- 例: データ入力、プログラミング、デザインなど
8. IT・テクノロジー分野: 多様な働き方が可能なIT分野は、障害当事者がスキルを活かしやすい職場として注目されています。
A型とB型事業所の違いって?
就労継続支援事業所のA型とB型は、雇用契約の有無、給料の支払い方法、対象者の条件などが異なります。
- A型: 雇用契約を結び、最低賃金以上の給料が支払われます。一般就労に近い形で働きたい方向けです。
- B型: 雇用契約を結ばず、作業に対する工賃が支払われます。体調やペースに合わせて無理なく働きたい方向けです。
社会福祉法人・NPO法人での仕事
社会福祉法人やNPO法人では、福祉支援スタッフ、職業指導員、事務職、相談員、介護職、施設管理スタッフ、送迎スタッフ、イベント企画スタッフ、広報担当など、様々な仕事があります。これらの仕事は、障害当事者だけでなく、障害福祉に関わる仕事に関心がある方にとっても、やりがいのある選択肢となります。
まとめ
障害のある人が自分らしく働くための環境は、法律や制度、企業の努力、そして社会全体の理解によって支えられています。この記事が、障害当事者の方々にとって、自分に合った働き方を見つけるための一助となれば幸いです。また、障害福祉に関わる仕事に関心がある方にとっても、情報提供の場となれば幸いです。
もし、就労に関して不安なことや疑問があれば、地域の就労支援機関や相談窓口に気軽に相談してみてください。専門の相談員が親身になってサポートしてくれます。
誰もが自分らしく輝ける社会を目指して、共に歩んでいきましょう。