障害者がプールに入る場合、どうしたらいい? やっぱり障害によって違いが出たりする?

障害のある方がプールに入る場合、いくつかの重要な考慮事項があります。障害の種類や程度によって必要なサポートや注意点が大きく異なるため、個別のニーズに合わせた対応が不可欠です。

一般的な準備と注意点:

  • 事前の確認: 利用するプールに障害者対応の設備(スロープ、リフト、更衣室、トイレなど)があるか事前に確認しましょう。多くの公共プールや一部の民間施設では、バリアフリー化が進んでいます。
  • 付き添い: 必要に応じて、介助者や支援者と一緒に利用しましょう。特に、入水や移動、水中での安全確保にサポートが必要な場合は重要です。
  • 医師の指示: 内部疾患や特定の健康状態にある場合は、事前に医師に相談し、プール利用の許可を得ましょう。
  • コミュニケーション: プールのスタッフに障害の種類や必要なサポートを具体的に伝え、協力体制を築きましょう。
  • 安全第一: 無理のない範囲で利用し、体調に異変を感じたらすぐに休憩しましょう。滑りやすいプールサイドでの移動には特に注意が必要です。

障害の種類別の考慮事項:

  • 肢体不自由のある方:
    • プール用車椅子や移動用具の利用を検討しましょう。プールサイドまでの移動や入水時に介助が必要となる場合があります。
    • 水中でのバランスを保つのが難しい場合があるため、手すりのあるコースの利用や、浮き具の使用を検討しましょう。
    • 義肢や杖をプールサイドまで使用することで、転倒を防げる場合があります。
  • 視覚障害のある方:
    • コースロープを触りながら泳ぐことで、まっすぐ進むことができます。
    • 他の利用者との衝突を防ぐため、優先レーンや専用レーンが設けられているか確認しましょう。
    • ターン時や壁に近づく際には、介助者やプールのスタッフにサポートを依頼しましょう。
  • 聴覚障害のある方:
    • 視覚的な指示や合図が重要になります。筆談やジェスチャーなど、コミュニケーション方法を事前に確認しておきましょう。
    • 緊急時の合図や指示が伝わるように、周囲の人の協力をお願いしておきましょう。
  • 内部障害のある方:
    • 水温や水圧が体に与える影響を考慮し、無理のない範囲で利用しましょう。
    • 体調の変化に注意し、少しでも不調を感じたらすぐに休憩することが大切です。
    • 緊急時の対応について、事前にプールのスタッフと共有しておきましょう。
  • 精神障害のある方:
    • プールの環境に慣れるまで、付き添いの人と一緒に少しずつ利用することから始めると良いでしょう。
    • パニックになったり、不安を感じたりした場合の対処法を事前に決めておきましょう。
    • 必要に応じて、イヤーマフなど周囲の音を遮断できるものを使用することも有効です。

その他:

  • 多くのプールでは、障害者向けのプログラムや教室が用意されている場合があります。地域のスポーツセンターや障害者福祉団体に問い合わせてみましょう。
  • ボランティア団体によるサポートを受けられる場合もあります。「プールボランティア」などのキーワードで検索してみるのも良いでしょう。

このように、障害の種類によってプール利用の際に考慮すべき点は異なります。事前にしっかりと情報収集を行い、安全で快適なプール体験ができるように準備をしましょう。


視覚障害者の方が安全かつ快適にプールを利用できるよう、様々な工夫がなされています。主なものを以下に挙げます。

プール側の設備や工夫:

  • コースロープの工夫:
    • 柔らかい素材のコースロープ: 指を引っかけて怪我をするのを防ぐため、ウレタン製など柔らかい素材のコースロープを使用する場合があります。
    • コースロープの位置: 視覚障害者優先レーンを設ける、または一番端のコースを使用してもらうなどの配慮がされます。
  • プールサイドの工夫:
    • 触覚による識別: プールサイドの材質や模様を部分的に変え、足裏の感覚でプールの端や危険な場所を認識できるようにする工夫。
    • 保護材の設置: ゴールやターンの際に壁に衝突した際の衝撃を和らげるため、プールサイドや壁面に柔らかい保護材を設置する場合があります。
    • 手すりの設置: 入水や水中での移動、休憩の際に掴める手すりを設置します。
    • スロープの設置: 車椅子での移動や、階段の昇降が困難な方のためのスロープを設置します。
  • 情報提供の工夫:
  • 専用レーンの設置: 視覚障害者優先または専用のレーンを設け、他の利用者との接触を避けるようにします。
  • 入水補助具: 自力での入水が難しい方のために、水泳用すべりマットなどを備えている場合があります。

利用者の工夫やサポート:

  • コースロープの活用: 泳ぐ際にコースロープに触れながら進むことで、まっすぐ泳ぐことができます。
  • 介助者の同行: 必要に応じて、介助者やボランティアのサポートを受けながら利用します。
  • タッピングバーの利用: 指導者や介助者が、ターンのタイミングやゴールを知らせるために、先端にボールのついた棒(タッピングバー)で身体の一部を軽く叩いて合図を送ります。
  • コミュニケーション: プールのスタッフや他の利用者に、視覚障害があることや必要なサポートを事前に伝え、理解と協力を得ることが大切です。
  • 安全な移動: プールサイドでは、白杖を使用したり、介助者の肩や腕につかまったりして、安全に移動します。
  • 無理のない利用: 体調に合わせ、無理のない範囲で利用することが重要です。少しでも不安を感じたら、すぐに休憩しましょう。

これらの工夫は、視覚障害のある方が安心してプールでの活動を楽しめるようにするためのものです。利用するプールによって設備やサポート体制は異なるため、事前に確認することが大切です。


障害者差別解消法は、障害のある人もない人も分け隔てなく、共に暮らせる社会を目指す法律です。2016年4月に施行され、2024年4月からは民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました。プール利用においても、この法律は重要な影響を与えています。

主な影響:

  • 不当な差別的取扱いの禁止: プール事業者は、障害があることを理由に、正当な理由なくプール利用を拒否したり、利用条件を不利に扱ったりすることが禁止されます。例えば、以下のような行為は不当な差別的取扱いに該当する可能性があります。
    • 障害があることを理由に入場を拒否する。
    • 介助者の付き添いを認めない。
    • 障害者のみ利用できる時間帯や場所を限定する。
    • 障害者に対してのみ特別な負担を求める。
  • 合理的配慮の提供: プール事業者は、障害のある人から何らかの配慮を求める意思表示があった場合、その実施に伴う負担が過重でない範囲で、合理的配慮を提供することが義務付けられます(2024年4月1日より民間事業者も義務化)。合理的配慮とは、障害のある人が他の人と平等にプールを利用できるよう、個別の状況やニーズに合わせて行う調整や変更のことです。具体的には以下のような例が挙げられます。
    • 入退水や移動のサポート: スロープやリフトの設置、介助者の付き添いを認める、プール用車椅子の準備など。
    • 視覚・聴覚情報: 音声案内や点字表示の提供、筆談や手話によるコミュニケーション、光による合図など。
    • ルールや利用方法の柔軟な調整: スイムキャップの着用を柔軟に対応する、休憩時間の配慮など。
    • 情報提供: プールの設備や利用方法に関する情報を、障害のある人が理解しやすい形式で提供する(ウェブアクセシビリティへの配慮など)。
  • 環境整備: プール事業者は、将来的に合理的配慮を円滑に提供するために、事前にバリアフリー化を進めるなどの環境整備に努めることが求められます。

具体的な事例:

  • 車椅子利用者がプールサイドまで安全に移動できるよう、スロープを設置する。
  • 視覚障害のある利用者に、プール内の設備やコースの状況を音声で説明する。
  • 聴覚障害のある利用者とのコミュニケーションに、筆談やジェスチャーを用いる。
  • 知的障害のある利用者が安心して利用できるよう、付き添いの支援を認める。

障害者差別解消法により、プールはより多くの人が利用しやすい場所となるよう、様々な取り組みが求められています。障害のある方がプールを利用する際は、遠慮なく必要な配慮を事業者に伝え、協力体制を築くことが大切です。また、もし不当な差別を受けた場合は、相談窓口に相談することもできます。

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