障害のある方が自宅に手すりを設置する際に、補助金や助成金が利用できる場合があります。主に以下の制度が考えられます。
- 介護保険制度の住宅改修費支給
- 対象者: 要介護または要支援認定を受けている方。
- 対象工事: 手すりの取り付け、段差の解消、滑りの防止のための床材変更、扉の取り替え、洋式便器への便器の取り替えなど、自宅で安全に暮らすために必要な工事が対象となります。手すりの設置も含まれます。
- 支給額: 支給限度額は20万円で、その9割(所得によっては8割または7割)が支給されます。自己負担は1割、2割、または3割となります。複数回に分けて使うことも可能です。
- 申請方法: 事前申請が必須です。ケアマネージャーに相談し、必要な書類を揃えて自治体の窓口に提出します。工事完了後にも再度申請が必要です。
- 注意点: 介護保険が対象となる方は、原則として介護保険制度の利用が優先されます。
- 地方自治体独自の補助金・助成金
多くの地方自治体で、高齢者や障害者の住宅改修(バリアフリー化)に対する独自の補助金・助成金制度を設けています。- 対象者・対象工事・支給額: 自治体によって条件が異なります。例えば、身体障害者手帳の等級や、世帯の所得状況によって支給額が変わる場合があります。手すりの設置も対象となることがほとんどです。
- 例:
- 大阪市では、重度心身障害者(児)住宅改修費給付として、下肢機能障害や体幹機能障害のある方を対象に、手すり工事などに上限25万円(非課税世帯は自己負担0円、課税世帯は自己負担あり)の給付があります。
- 堺市でも、障がい者住宅改修補助金として、手すりの取り付けなどが対象となる制度があります。
- 確認方法: お住まいの市区町村の福祉担当窓口や、地域の地域包括支援センターに問い合わせるのが確実です。リフォーム業者も地域の補助金制度に詳しい場合がありますので、相談してみるのも良いでしょう。
申請する際の一般的な流れ
- 情報収集: まずは、ご自身がどの制度の対象となるか、お住まいの地域の自治体窓口や地域包括支援センターに相談し、情報を集めましょう。
- ケアマネージャーへの相談(介護保険の場合): 介護保険を利用する場合は、担当のケアマネージャーに相談し、住宅改修の必要性や工事内容について話し合います。
- 見積もりの取得: 複数のリフォーム業者から見積もりを取り、比較検討します。
- 事前申請: 工事着工前に、自治体へ必要書類を提出し、事前申請を行います。
- 工事実施: 自治体の承認が下りたら工事を実施します。
- 事後申請・支給: 工事完了後、領収書などの必要書類を提出し、補助金・助成金の支給申請を行います。
手すりの設置は、転倒予防など安全な生活を送る上で非常に重要です。ぜひ、お住まいの地域の制度を確認し、補助金を活用されることをお勧めします。
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浴室(お風呂)への手すりの設置も、多くの補助金・助成金の対象となります。
浴室は滑りやすく、転倒のリスクが高い場所であるため、特に手すりの設置が推奨されます。
主な制度について、浴室への手すりの設置がどのように扱われるかをご説明します。
- 介護保険制度の住宅改修費支給
- 対象: 要介護・要支援認定を受けている方。
- 浴室の手すり: 浴室は、介護保険の住宅改修の対象となる場所として明記されています。浴槽の出入りや洗い場での立ち座りを補助するための手すりは、一般的な対象工事です。
- 種類:
- 取り付け工事が必要な手すり(I字型、L字型、水平型など): 住宅改修費の対象となり、費用の9割(所得に応じて8割または7割)が支給されます。支給限度額は20万円です。
- 据え置き型の手すり(工事が不要なもの): これは「福祉用具貸与制度」の対象となる場合があります。
- 浴槽用手すり(浴槽の縁に挟み込むタイプなど): これは「特定福祉用具販売制度」の対象となる場合があります。ただし、指定された業者からの購入が必要で、年間10万円が上限となります。
- 注意点: 浴室の壁の強度によっては、取り付け不可能なケースもあります。必ずケアマネージャーやリフォーム業者に相談し、適切な手すりの種類と設置方法を選びましょう。
- 地方自治体独自の補助金・助成金(大阪市、堺市の例)
- 大阪市:
- 「重度心身障がい者(児)住宅改修費給付」の対象工事に「浴室、居室、廊下等に手すりを取り付ける場合」と明記されています。下肢機能障害や体幹機能障害のある方を対象としています。上限額や自己負担割合は世帯の所得によって異なります(非課税世帯は自己負担なし、課税世帯は自己負担あり)。
- 介護保険の「住宅改修費支給」も利用可能で、同様に浴室の手すり設置も対象です。
- 堺市:
- 「重度障害者等住宅改修費の給付」の対象工事に「対象者が居住の用に供している住宅の便所、浴室、玄関、廊下、階段、台所、居室等の改修工事」と明確に記載されています。身体障害者手帳の等級や世帯の所得によって支給額が異なります。
- 介護保険の「介護保険利用住宅改修補助金」も利用可能です。
- 大阪市:
浴室での手すり設置のポイント
- 場所: 浴槽の出入り口、洗い場での立ち座りの補助、シャワーチェアに座る際のサポートなど、利用者の動きに合わせて最適な位置に設置することが重要です。
- 形状: 縦型、横型、L字型など様々な形状があり、用途や身体状況に合わせて選びます。
- 素材: 浴室は常に水を使う場所なので、滑りにくく、水に強い素材(樹脂被覆など)の手すりが選ばれます。
- 専門家への相談: 浴室の手すり設置は、安全性を確保するためにも、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員、専門のリフォーム業者とよく相談し、適切な計画を立てることが非常に重要です。
お住まいの自治体の窓口(福祉課など)や、担当のケアマネージャーに具体的に相談し、ご自身の状況に合った制度や手続きを確認してください。
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手すりを付けるのに「一番必要な場所」は、利用される方の身体状況や日常生活での動き、家屋の構造によって異なります。しかし、一般的に転倒リスクが高く、自立した動作を補助する必要性が高い場所が優先されます。
具体的には、以下の場所が特に重要視されます。
- 浴室(お風呂)
- 理由: 床が滑りやすく、浴槽をまたぐ動作や洗い場での立ち座りなど、バランスを崩しやすい動作が多い場所です。転倒した場合の怪我も重症化しやすい傾向にあります。
- 設置箇所:
- 浴槽の出入り口付近(またぎ動作の補助)
- 洗い場での立ち座りの補助(シャワーを使う位置など)
- トイレ
- 理由: 便器への立ち座り動作は、足腰に負担がかかり、バランスを崩しやすい動作です。プライバシーの確保のためにも、できる限り自立した動作を支援することが望ましい場所です。
- 設置箇所:
- 便器の横(立ち座りの補助にL字型が効果的)
- 入り口付近(扉の開閉時や出入り時の安定)
- 玄関
- 理由: 靴の脱ぎ履きや、段差の昇降があるため、バランスを崩しやすい場所です。外出・帰宅の際に必ず利用する場所なので、安全確保が重要です。
- 設置箇所:
- 上がり框(かまち)の段差付近
- 靴の脱ぎ履きをする場所の近く
- 階段・段差のある場所
- 理由: 階段からの転落は、非常に危険性が高く、重篤な怪我につながる可能性があります。
- 設置箇所:
- 階段の両側(特に片麻痺の方など、利き手が変わる場合に両側にあると安全性が高まります)
- 屋外の段差(アプローチなど)
- 廊下
- 理由: 自室からトイレ、浴室、リビングなどへの移動経路となるため、安全な移動をサポートするために必要です。特に、長い廊下や曲がり角がある場所、ふらつきやすい方は重要です。
- 設置箇所:
- 移動経路に沿って連続して設置
- 方向転換する場所
最も重要なのは「使う人の状況に合わせる」こと
上記の優先順位はあくまで一般的なものです。手すりの設置場所を決める上で最も重要なのは、実際に使用するご本人の身体状況、生活動線、日常的にどこで不安を感じているかを把握することです。
- 理学療法士(PT)や作業療法士(OT): 専門家のアドバイスを受けるのが最も確実です。身体機能の評価に基づいて、最適な手すりの種類、位置、高さを提案してくれます。
- ケアマネージャー: 介護保険を利用する場合、ケアマネージャーが自宅を訪問し、適切な改修箇所を検討してくれます。
- リフォーム業者: バリアフリー工事の実績が豊富な業者であれば、現場の状況に合わせて適切な提案をしてくれるでしょう。
「どこに手あかがついているか」「どこで無意識に壁に手を当てているか」など、普段の行動から手すりが必要な場所を見つけるヒントになることもあります。
まずは、専門家と一緒に、ご本人の生活に最も即した優先順位を決定することをお勧めします。