障害者に対する差別をなくすための社会全体の意識改革

障害者に対する差別をなくすためには、社会全体で意識改革と具体的な行動が必要です。以下に、差別をなくすためのいくつかの重要な取り組みを挙げます。

1. 法律と制度の整備:

  • 障害者差別解消法の徹底:
    • 障害者差別解消法は、障害を理由とする不当な差別的扱いを禁止し、合理的配慮の提供を求めています。この法律の周知と徹底が重要です。
    • 特に、2024年4月1日からは、民間事業者による合理的配慮の提供が義務化されたため、その内容を広く周知し、適切な対応を促す必要があります。
  • バリアフリー化の推進:
    • 物理的なバリアフリー化(公共交通機関、建物、道路など)を進めることで、障害者の社会参加を促進します。
    • 情報バリアフリー化(ウェブサイト、情報端末など)も同様に重要です。
  • インクルーシブ教育の推進:
    • 障害のある子どもとない子どもが共に学ぶインクルーシブ教育を推進することで、幼い頃から互いを尊重し、理解し合う心を育みます。

2. 社会の意識改革:

  • 正しい知識と理解の促進:
    • 障害に関する正しい知識と理解を深めるための教育や啓発活動が必要です。
    • メディアは、障害者をステレオタイプに描くのではなく、多様な個人として尊重する報道を心がけるべきです。
  • コミュニケーションの工夫:
    • 障害者とのコミュニケーションにおいて、相手の立場に立った配慮が必要です。
    • 例えば、視覚障害者には音声で情報を伝え、聴覚障害者には筆談や手話を使うなど、適切な方法を選択します。
  • 合理的配慮の提供:
    • 障害者が社会生活を送る上で必要な配慮(合理的配慮)を、個々の状況に合わせて提供することが重要です。
    • 合理的配慮は、過度な負担にならない範囲で、柔軟に検討されるべきものです。

3. 具体的な行動:

  • 困っている人への積極的な声かけ:
    • 障害者が困っている場面に遭遇したら、積極的に声をかけ、必要な手助けをします。
    • ただし、相手の意向を尊重し、無理強いは避けます。
  • 優先スペースの尊重:
    • 障害者用駐車場や優先席など、障害者のためのスペースを尊重し、必要のない人は利用を控えます。
    • 視覚障害者誘導用ブロックの上に物を置いたり、道をふさいだりしないようにします。
  • 相談窓口の活用:
    • 障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」や、各自治体の相談窓口を活用し、困ったときには相談することも大切です。

関連情報:

これらの取り組みを通して、障害のある人もない人も、互いにその人らしさを認め合いながら共に生きる社会を目指すことが重要です。


障害者差別解消法は、障害を理由とする差別をなくし、共生社会を実現するための法律です。その具体的な内容は以下の通りです。

目的

この法律は、障害者基本法の理念を具体化し、障害者が社会で平等に生活できる環境を整えることを目的としています。

主な内容

  1. 不当な差別的取扱いの禁止
    • 障害を理由にサービスや機会の提供を拒否したり、条件を付けたりすることを禁止します。
    • 例: 障害者が施設利用を求めた際に正当な理由なく拒否することは違法です。
  1. 合理的配慮の提供
    • 障害者から申出があった場合、事業者や行政機関は合理的な範囲で必要な対応を行う義務があります。
    • 例: 車椅子利用者へのスロープ設置や手助けなど。
  1. 環境の整備
    • バリアフリー化や障害者が利用しやすい設備の導入などが努力義務として定められています。

対象範囲

  • 対象となる障害者: 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害含む)などで、社会的障壁によって日常生活に制限を受ける人々。
  • 対象となる事業者: 企業、店舗、ボランティア団体など幅広い事業活動が含まれます。

改正点

2024年4月から民間事業者にも「合理的配慮の提供」が法的義務化されました。これにより行政機関だけでなく、民間でも障害者への対応が強化されています。

この法律は、障害者が平等に社会参加できる環境づくりを促進する重要な仕組みです。


行政機関と民間企業の障害者差別解消の取り組みには、以下のような違いがあります。

法的義務の範囲

  • 行政機関
    • 「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」が法的義務です。障害者への対応は厳格に求められ、法律で「~しなければならない」と明記されています。
    • 環境整備については努力義務ですが、公共性が高いため積極的な取り組みが期待されています。
  • 民間企業
    • 「不当な差別的取扱いの禁止」は法的義務ですが、2024年4月以前は「合理的配慮の提供」が努力義務でした。改正後はこれも法的義務となり、対応が強化されています。
    • 環境整備については依然として努力義務であり、企業ごとの自主性に委ねられる部分が多い。

罰則の有無

  • 行政機関
    • 法律違反があれば厳しい指導や改善命令が行われますが、罰則規定はありません。
  • 民間企業
    • 違反が繰り返される場合、大臣による報告要求や助言・指導・勧告が行われます。さらに報告を怠ったり虚偽報告をした場合には過料(20万円以下)が課されることがあります。

具体的な取り組み

  • 行政機関
    • 障害者向け窓口対応や公共施設のバリアフリー化など、広範囲での対応を実施しています。
  • 民間企業
    • 障害者雇用や店舗での合理的配慮(例:段差解消、コミュニケーション支援)など、個々の事業内容に応じた取り組みを行っています。ただし、業務に付随する範囲内での対応に限定される場合もあります。

これらの違いは、公的機関と民間企業それぞれの役割や責任範囲に基づいていますが、改正後は民間企業にもより積極的な対応が求められるようになっています。


障害者に対する「合理的配慮」の具体例は、障害の特性や状況に応じて柔軟に対応するもので、以下のような事例が挙げられます。

物理的環境への配慮

  • 車椅子利用者のために段差を解消する携帯スロープを設置する。
  • 高い場所に陳列された商品を取って渡す。
  • 車椅子利用者が受付窓口を利用しやすいよう、カウンター以外の場所で対応したり、記入用のボードを提供する。

コミュニケーション支援

  • 聴覚障害者に対して筆談ボードやスマートフォンのメモ機能を活用して説明を行う。
  • 手話通訳者を面接時に同席させる。
  • マスク着用時に聴覚障害者が口の動きを読み取れない場合、透明ボード越しで一時的にマスクを外して対応する。

教育現場での配慮

  • 読み書きに困難がある子どもには拡大教科書や音声読み上げソフトを提供する。
  • 刺激に敏感な子どもには仕切りのある机や別室でテストを受ける環境を整える。
  • 指示理解が難しい子どもには、指示を1つずつ出したり、その日の予定をカードや表で示す。

職場での配慮

  • 障害者従業員が作業工程でつまずいた場合、工程を細かく分析し改善する。
  • 柔軟な勤務体制や業務内容の調整を行う。

合理的配慮は個別性が高く、障害者本人との対話を通じて適切な方法を検討し、過度な負担にならない範囲で提供されることが重要です。


公共施設での合理的配慮の具体例には以下のようなものがあります。

物理的環境の整備

  • 段差の解消: 車椅子利用者のためにスロープを設置したり、エレベーターを利用可能にする。
  • 多機能トイレの設置: 手すりや広いスペースを備えたトイレを設置する。
  • ドアノブの変更: 肢体不自由者が使いやすいようにレバータイプのドアノブを導入。

コミュニケーション支援

  • 筆談や手話対応: 聴覚障害者との意思疎通を円滑にするため、筆談ボードや手話通訳を提供する。
  • 分かりやすい説明: 書類記入時に簡潔な言葉で説明したり、視覚的な資料を活用する。

移動や利用の支援

  • 専用スペースの確保: 車椅子利用者が移動しやすいように広い通路や座席を確保する。
  • エレベーター利用の特例: 通常職員専用のエレベーターを障害者が利用できるようにする。

その他の配慮

  • 休憩スペースの提供: 疲労しやすい障害者が休憩できる場所を設ける。
  • 特注備品の導入: 例えば車椅子対応の机や操作しやすいパソコン設備を導入する。

これらは公共施設が障害者のニーズに応じて柔軟に対応し、社会的障壁を取り除くための重要な取り組みです。

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