障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)は、日本における障害者福祉を包括的に支援する法律です。この法律の概要は以下の通りです。
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法律の目的
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この法律は、障害者や障害児が基本的人権を享有する個人として尊重され、日常生活や社会生活を営むことができるよう、必要な福祉サービスや地域生活支援を提供することを目的としています。また、障害の有無にかかわらず、すべての国民が相互に人格と個性を尊重し合い、安心して暮らせる共生社会の実現を目指しています。
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主な支援内容
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以下のようなサービスを通じて、障害者の日常生活や社会参加を支援します。
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- 介護給付: 居宅介護、重度訪問介護、同行援護など。
- 訓練等給付: 自立訓練(生活訓練・機能訓練)、就労移行支援、就労継続支援など。
- 地域生活支援事業: 地域移行支援や地域定着支援など。
- 自立生活援助: 障害者が居宅で自立した生活を営むための相談や助言。
- 相談支援: サービス利用計画の作成や継続的な相談対応。
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対象者
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この法律の対象者には以下が含まれます:
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- 身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者(発達障害を含む)
- 難病等で一定の障害がある人
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基本理念
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法律は「ノーマライゼーション」の理念に基づき、すべての人が分け隔てなく共生できる社会を目指しています。これには、障壁となる制度や慣行などの除去も含まれます。
この法律は2006年に施行された「障害者自立支援法」を改正し、2013年から「障害者総合支援法」として運用されています。
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障害者総合支援法の改正点について、以下の内容が挙げられます。
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主な改正点
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- 対象者の拡大
障害者総合支援法では、従来の身体障害者、知的障害者、精神障害者に加え、難病患者も対象に含める改正が行われました。これにより、難病患者が福祉サービスを受けやすくなりました。 - 地域生活支援の強化
地域での生活を支援するサービスが拡充され、障害者が住み慣れた地域で自立した生活を送るための支援が強化されました。これには、地域移行支援や地域定着支援などが含まれます。 - 精神障害者への権利擁護の明確化
精神保健福祉法との連携が強化され、精神障害者の権利擁護を図ることが明確化されました。これにより、精神障害者がより適切な福祉サービスを受けられるようになっています。
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これらの改正は、障害者の生活環境や社会参加をさらに促進することを目的としています。
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改正された障害者総合支援法が障害者に与える具体的な影響は以下の通りです。
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1. 地域生活の向上
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- 共同生活援助(グループホーム)の支援内容の明確化により、障害者が住み慣れた地域で安心して暮らせる環境が整備されました。
- 地域生活支援拠点の整備や基幹相談支援センター設置の努力義務化により、地域での支援体制が充実し、孤立を防ぐ仕組みが強化されています。
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2. 就労機会の拡大
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- 就労選択支援の創設により、障害者が多様な働き方を選べるようになりました。
- 雇用率算定方法の変更(短時間労働者への配慮)により、障害者の雇用促進が進み、特例給付金制度などを活用した雇用環境改善が期待されています。
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3. 精神障害者への支援強化
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- 医療保護入院制度の見直しや入院者訪問支援事業の創設により、精神障害者が必要な医療やサービスを受けやすくなりました。
- 精神科病院での虐待防止対策が推進され、安心して治療を受けられる環境が整備されています。
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4. 難病患者への支援拡充
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- 難病患者や小児慢性特定疾病患者への医療費助成が円滑化され、診断時点で助成開始となる仕組みが導入されました。
- 指定難病患者に登録証を発行することで、福祉サービス利用がスムーズになり、自立支援事業も強化されています。
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5. 社会的包摂の促進
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- 法改正による合理的配慮義務化(障害者差別解消法と連携)により、施設やサービス利用時の障壁除去が進み、社会参加が容易になっています。
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これらの改正点は、障害者の日常生活や社会参加を促進し、自立した生活を送るための環境改善につながっています。
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障害者総合支援法の対象者は以下の通りです:
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障害者
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- 身体障害者: 身体障害者福祉法第4条に規定される18歳以上の身体障害者。
- 知的障害者: 知的障害者福祉法に規定される18歳以上の知的障害者。
- 精神障害者: 精神保健及び精神障害者福祉法第5条に規定される18歳以上の精神障害者(発達障害を含む)。
- 難病患者: 厚生労働大臣が定める程度の障害がある、300種類以上の難病を持つ18歳以上の患者。
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障害児
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- 身体障害児: 身体に障害がある18歳未満の児童。
- 知的障害児: 知的障害がある18歳未満の児童。
- 精神障害児: 精神に障害がある18歳未満の児童(発達障害を含む)。
- 難病患者: 厚生労働大臣が定める程度の障害がある難病を持つ18歳未満の児童。
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この法律は、成人だけでなく児童も対象としており、幅広い支援を提供しています。
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障害福祉サービスには、障害者総合支援法に基づき提供される多様な支援があります。以下に主な種類をまとめます。
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介護給付
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障害者の日常生活を支えるためのサービスです。
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- 居宅介護: 自宅での身体介護や家事援助。
- 重度訪問介護: 重度の障害者への自宅での介護や外出時の支援。
- 同行援護: 視覚障害者の外出時に必要な情報提供や移動支援。
- 行動援護: 知的障害・精神障害者の行動上の困難を支援。
- 短期入所: 家族が介護できない場合に施設で短期間支援。
- 療養介護: 医療と介護を必要とする人への昼間の支援。
- 生活介護: 常時介護が必要な人への昼間の生活支援。
- 施設入所支援: 施設入所者への夜間や休日の生活全般の支援。
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訓練等給付
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自立や就労を目指すためのサービスです。
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- 自立訓練(機能訓練・生活訓練): 身体機能回復や社会生活能力向上を目的とした訓練。
- 就労移行支援: 一般就労を目指すための訓練やサポート。
- 就労継続支援(A型・B型): 雇用契約型(A型)または非雇用型(B型)の就労支援。
- 就労定着支援: 就職後の職場定着をサポート。
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居住系サービス
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住まいに関する支援です。
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- 共同生活援助(グループホーム): 障害者が共同で生活しながら必要な介助を受ける。
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地域生活支援事業
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地域特性に応じた創意工夫によるサービスです。
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- 移動支援など、外出や地域活動をサポートするものがあります。
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障害者総合支援法の目的は、障害者が基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるとの理念に基づき、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することです。このため、障害者の自立及び社会参加を支援する施策に関する基本原則を定め、国や地方公共団体の責務を明らかにし、これらの施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としています。
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障害者総合支援法の施行例には以下のような具体的な取り組みがあります。
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地域生活支援の強化
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- グループホーム利用者が希望する地域生活の継続を支援する体制が整備されました。例えば、グループホーム入居者に対し、一人暮らしを希望する場合には家事や居住支援を提供し、退去後も定期的な相談支援を継続的に行う仕組みが導入されています。
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精神障害者への支援拡充
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- 精神障害者向けに、市町村ごとに拠点を設けることや地域協議会との情報共有が努力義務化されました。また、精神保健福祉士の業務に精神保健に関する相談援助が新たに追加されました。
- 医療保護入院制度の見直しが行われ、本人の意思を尊重しつつ市町村長の同意で入院可能とする仕組みが整備されました。さらに、入院者訪問支援事業が創設され、精神科病棟への定期的な相談員訪問が実施されています。
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地域ニーズに応じた福祉サービス
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- 都道府県が指定する事業者について、市町村が意見を申し出る権利を持つようになり、地域特性に応じた福祉サービスの提供が可能となりました。また、居住地特例に介護保険施設等が追加され、財政負担の分散が図られています。
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これらの施行例は、障害者総合支援法による具体的な社会福祉サービスの改善と拡充を示しています。