てんかん発作の誘発原因にはどんなものがあるの? 原因はひとつじゃないの?

てんかん発作の誘発原因は、決して一つではありません。様々な要因が複雑に絡み合って発作を引き起こすことがあります。てんかんを持っている方が、発作を起こしやすくなる特定の状況や要因を「誘発原因(誘発因子)」と呼びます。

主な誘発原因としては、以下のようなものが挙げられます。

1. 睡眠不足・不規則な睡眠: てんかん発作の最も一般的な誘発原因の一つです。寝不足や不規則な睡眠は、脳の興奮性を高め、発作を起こしやすくします。特に、若年ミオクロニーてんかんの患者さんで顕著に見られることがあります。

2. ストレス・疲労: 心身の過労や強いストレスも発作の引き金になることがあります。不安や怒りといった感情も発作につながる場合があります。

3. アルコール摂取: 過度のアルコール摂取や、飲酒後の離脱期に発作が起こりやすくなることがあります。

4. 光刺激: 特定の種類のてんかん(光過敏性てんかん)では、点滅する光(テレビ、ゲーム、ディスコの照明など)が発作を誘発することがあります。

5. 特定の薬剤: 風邪薬に含まれる成分(エフェドリンなど)、一部の抗うつ薬や抗精神病薬などが、てんかん発作を起こしやすくすることがあります。他の病気で薬を服用する際は、必ず医師にてんかんがあることを伝えましょう。また、一部のレクリエーショナルドラッグも発作を誘発する可能性があります。

6. 体調不良・発熱: 発熱や感染症など、全身の体調が悪い時にも発作が起こりやすくなることがあります。

7. 服薬忘れ: 抗てんかん薬を飲み忘れると、体内の薬の濃度が下がり、発作が起こりやすくなります。飲み忘れは発作を誘発する大きな原因となります。

8. 女性の場合のホルモン変動: 月経周期に同期して、生理前後に発作が増加することがよく知られています。

9. その他:

  • 過呼吸: 特に欠神発作など、特定の種類のてんかん発作を誘発することがあります。
  • 特定の感覚刺激: 予期せぬ音、不意の接触などが発作を誘発することもあります。
  • 精神活動: 計算、思考、意思決定、読書、パズル、ビデオゲームなどの精神活動が発作を誘発する例もあります(緩徐誘発)。

これらの誘発原因は、患者さん一人ひとりによって異なります。ご自身の発作がどのような状況で起こりやすいかを知ることは、発作の予防において非常に重要です。規則正しい生活習慣を心がけ、医師と相談しながら誘発因子を避ける工夫をすることが大切です。

てんかんの中には、MRIなどの検査で脳に明らかな異常が見つからないにもかかわらず発作を繰り返す「原因不明のてんかん」が存在します。これは「特発性てんかん」と呼ばれ、てんかん全体の約6割を占めるとされています

なぜこのような原因不明のてんかんが存在するのか、その理由はまだ完全に解明されていませんが、いくつかの仮説やメカニズムが考えられています。

1. 脳の神経細胞の「素因」

特発性てんかんは、脳の神経細胞が健常な人よりも過敏であるために、通常では反応しないような微小な電気変化にも過剰に興奮してしまうことで発作が起こると考えられています。つまり、脳自体に目に見える病変がなくても、てんかん発作を起こしやすい「素因」が遺伝的に存在するとされています

2. 遺伝的要因

多くの特発性てんかんには、遺伝的な要素が関わっていることが分かってきています。特定の遺伝子変異がてんかんの発症に関与していることが明らかになっているケースもあります。ただし、てんかん全体として明確な遺伝形式を示すものは少なく、多くの因子が重なって発症する「多要因遺伝」の形式をとると考えられています

3. 微細な脳の機能的・構造的異常

現在の画像診断技術では捉えきれない、非常に微細な脳の機能的あるいは構造的な異常が関わっている可能性も指摘されています。例えば、神経細胞のネットワークや伝達物質のバランスの乱れ、グリア細胞(神経細胞の機能維持に関わる細胞)の機能不全などが考えられます。これらは、従来のMRIなどでは検出が難しい場合があるため、「原因不明」とされてしまうことがあります。

4. 診断技術の限界

診断技術の進歩によって、これまで原因不明とされてきたてんかんの一部が、実は微細な脳の構造的異常(皮質形成異常など)によるものだったと判明するケースもあります。今後、さらなる診断技術の発展によって、現在「原因不明」とされているてんかんの原因が明らかになっていく可能性もあります。

このように、原因不明のてんかんは、単一の原因で説明できるものではなく、脳の神経細胞の特性、遺伝的要因、微細な機能的・構造的異常、そして現在の診断技術の限界など、複数の要因が絡み合って存在すると考えられています。研究が進むにつれて、これらの「原因不明」のてんかんのメカニズムがより詳細に解明されることが期待されています。

特定の刺激や状況がてんかん発作を引き起こすのは、脳の神経細胞が過敏な状態にあるため、通常では問題にならないような刺激に対しても過剰に反応してしまうからです。これらの刺激は「誘因」と呼ばれ、発作の引き金となることがあります。

主な誘因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 睡眠不足や疲労、ストレス: 生活リズムの乱れ、特に睡眠不足は、脳の興奮と抑制のバランスを崩しやすく、てんかん発作の大きな誘因となります。疲労やストレスも同様に脳に負担をかけ、発作を誘発する可能性があります。
  • 体温の上昇: 高熱や暑さによる体温の上昇も、発作を引き起こすことがあります。特に、乳幼児期に熱性けいれんを経験したことがある人は、体温上昇に注意が必要です。
  • 光刺激: 光過敏性てんかんと呼ばれるタイプでは、点滅する光(テレビゲームの画面、ストロボライトなど)が発作の誘因となることがあります。
  • 月経: 女性の場合、月経周期に伴うホルモンバランスの変化が発作の頻度や重症度に影響を与えることがあります。
  • 薬の飲み忘れ: てんかんの治療薬は、脳の興奮を抑えることで発作を予防しています。薬の飲み忘れは、血中濃度が低下し、脳の興奮性が高まることで発作を誘発する可能性が高まります。
  • アルコールの摂取: アルコールは脳の機能を変化させ、発作の閾値を下げる可能性があります。
  • 特定の音や音楽: 稀ではありますが、特定の音や音楽が発作の誘因となる「反射性てんかん」も存在します。

これらの誘因は、脳の神経細胞の過剰な興奮をさらに助長し、発作を引き起こすと考えられています。てんかんを持つ人にとっては、どのような状況で発作が起こりやすいかを把握し、誘因を避けるための工夫をすることが、発作の予防に繋がります。

光感受性てんかんの患者さんに特有の刺激は、その名の通り特定の光刺激です。一般のてんかん患者さんにも睡眠不足やストレスなどが誘因となることはありますが、光感受性てんかんの場合、以下のような光のパターンや特性が直接的に発作を誘発する特徴があります。

主な誘発刺激:

  • 点滅する光 (閃光):
    • テレビやビデオゲームの画面: 特にコントラストの強い色(赤と青など)が交互に点滅する、急速に画面が切り替わる、画面のちらつき(フレームレートが低いモニターなど)などが誘発しやすいとされています。1997年のアニメ「ポケットモンスター」の事件は、この典型例として知られています。
    • ディスコの照明、パトライト、サイレンの光: 強烈なフラッシュライトや点滅する光が発作を引き起こすことがあります。
    • バーコードリーダーの赤色点滅光: 比較的稀なケースですが、医療現場などで使用されるバーコードリーダーの点滅光が誘発因子となることも報告されています。
    • 自然光のちらつき: 木漏れ日、水面や雪面に反射する光のちらつきなども誘因となることがあります。
  • 特定の周波数帯の点滅:
    • 特に9Hzから15Hz程度(ヘルツ、1秒間の点滅回数)の点滅刺激が発作を誘発しやすいとされています。これは脳波検査で発作を誘発する際に用いられる周波数帯でもあります。
  • 高コントラストの縞模様:
    • 急速に変化する、あるいは高コントラストの白黒の縞模様など、視覚的に強い刺激となるパターンも誘発因子となることがあります。

なぜこれらの刺激が発作を引き起こすのか?

光感受性てんかんの患者さんの脳は、これらの特定の光刺激に対して過剰に反応する「光突発脳波反応 (PPR: Photosensitive Paroxysmal Response)」と呼ばれる異常な脳波活動を示すことが知られています。これは、視覚刺激を処理する脳の領域が、特定の光のパターンや点滅に対して異常な興奮を起こしやすく、それがてんかん発作へとつながると考えられています。

光感受性てんかんの患者さんは、これらの誘発刺激を避けるための工夫(テレビから離れて見る、部屋の照明を明るくする、ゲームのプレイ時間を制限するなど)や、適切な抗てんかん薬による治療が重要となります。

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