デフリンピックとパラリンピックは、どちらも障害を持つアスリートのための国際的なスポーツ大会ですが、いくつかの重要な違いがあります。主な違いは、対象となる障害の種類と、それに伴うコミュニケーション方法、そして競技規則の一部です。競技内容自体は、共通する競技もあれば、それぞれ特有の競技もあります。
以下に主な違いをまとめました。
デフリンピック (Deaflympics)
- 対象となる障害: 主に聴覚障害(ろう者)のアスリートが対象です。聴覚に障害があり、日常会話が困難なレベルの選手が参加します。
- コミュニケーション方法: 聴覚障害を持つアスリートの特性に合わせ、手話が主要なコミュニケーション手段となります。スタートの合図なども、視覚的な方法(旗など)が用いられます。
- 競技規則: 音に頼らないように、一部の競技規則がデフリンピック用に調整されています。例えば、短距離走のスタートでは、ピストル音の代わりに光や旗が使われます。
- 歴史: 1924年にフランスで「国際サイレントゲーム」として始まり、オリンピックに次いで古い歴史を持つ国際スポーツ大会です。
- 主催団体: 国際ろう者スポーツ委員会 (International Committee of Sports for the Deaf – ICSD) が主催しています。
- 開催頻度: 夏季・冬季ともに4年に一度開催されます。
パラリンピック (Paralympic Games)
- 対象となる障害: 身体障害、視覚障害、知的障害など、非常に幅広い障害を持つアスリートが対象です。車いす使用者、義肢使用者、視覚障害者、知的障害者など、多岐にわたります。
- コミュニケーション方法: アスリートの障害の種類によって様々な補助具やコミュニケーション方法が用いられます。音声による指示や、ガイドランナー、コーチによる補助など様々です。
- 競技規則: 各障害の種類と程度に応じて、クラス分けが行われ、それぞれのクラスで公平な競技が行われるように競技規則が調整されます。
- 歴史: 1948年にイギリスで脊髄損傷患者のリハビリテーションを目的とした大会として始まり、1960年のローマ大会からオリンピック開催地と同じ場所で行われるようになりました。
- 主催団体: 国際パラリンピック委員会 (International Paralympic Committee – IPC) が主催しています。
- 開催頻度: 夏季・冬季ともにオリンピックの直後に同じ開催都市で開催されます。
競技内容について
競技内容に関しては、デフリンピックとパラリンピックの両方で実施される共通の競技も多くあります(例:陸上競技、水泳、自転車競技、卓球など)。しかし、それぞれの大会で特有の競技も存在します。
- デフリンピック特有の競技: 聴覚障害者の特性を活かした、あるいは聴覚に頼らない競技が多いです。例えば、デフバスケットボール、デフサッカーなど、チームスポーツが盛んです。
- パラリンピック特有の競技: 車いすバスケットボール、シッティングバレーボール、ボッチャ、ゴールボール(視覚障害者向け)など、特定の障害に特化した競技や、その障害の特性を活かした競技が多数存在します。
まとめ
最も大きな違いは、デフリンピックが「聴覚障害」に特化しているのに対し、パラリンピックは「聴覚障害以外の幅広い障害」を対象としている点です。この根本的な違いが、コミュニケーション方法や一部の競技規則の違いにつながっています。
どちらの大会も、障害を持つアスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、スポーツの素晴らしさを世界に伝える場であることに変わりはありません。
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「デフ (deaf)」は、英語で「聴覚障害のある、耳が聞こえない」という意味を持つ形容詞です。
主に、日常会話が困難なレベルの聴力損失がある人々を指す際に使われます。
デフリンピック(Deaflympics)という名称も、この「デフ」に由来しており、「聴覚障害者のオリンピック」という意味合いを持っています。
したがって、「デフ」という言葉を聞いたら、「耳が聞こえないこと」や「聴覚に障害があること」を意味すると理解してください。
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デフリンピックでは、聴覚障害を持つアスリートのために、音の合図の代わりに様々な視覚的な合図が使用されます。主なものとしては以下のようなものがあります。
- 旗(フラッグ):
- スタートの合図: 陸上競技の短距離走や水泳のスタートなどで、スタートピストルの代わりに旗を振り下ろすことで合図を出します。
- 審判の指示: 競技中に審判が選手に指示を出す際にも、旗を使って合図を送ることがあります。
- 光(ライト):
- スタートランプ: 陸上競技のスタートブロックや水泳のスタート台に、光るランプが設置されており、点滅や点灯でスタートの合図を送ります。
- タイマーやスコアボード: 競技時間や得点を示す大型のタイマーやスコアボードが設置され、視覚的に情報を伝えます。
- 手話:
- 審判やコーチとのコミュニケーション: 審判やコーチは、手話を使って選手にルール説明、指示、アドバイスなどを伝えます。
- 選手間のコミュニケーション: チーム競技では、選手同士が手話を使ってコミュニケーションを取ります。
- ジェスチャー:
- 審判のジェスチャー: 旗や手話と合わせて、審判が身振り手振りで選手に指示や判定を伝えることがあります。
- 大型スクリーンや表示板:
- 競技会場に設置された大型スクリーンや表示板に、競技状況、選手名、記録、審判の判定などが文字や映像で表示され、視覚的に情報を共有します。
これらの視覚的な合図は、聴覚に頼ることなく、アスリートが公平かつ安全に競技に参加できるようにするために不可欠な要素となっています。
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デフリンピックとパラリンピックの選手数は、大会の規模や開催年によって変動しますが、おおよその傾向と最新のデータ(入手可能な範囲で)は以下の通りです。
デフリンピックの選手数
デフリンピックはパラリンピックに比べて規模が小さく、参加選手数も少なくなります。
- 最近の夏季大会の傾向:
- 2022年 第24回夏季デフリンピック競技大会(ブラジル・カシアス・ド・スル): 73か国・地域から2,401名の選手が参加しました。
- 2017年 第23回夏季デフリンピック競技大会(トルコ・サムスン): 100カ国・地域から約3,100人の選手が出場し、過去最多となりました。
- 今後の大会の予測:
- 2025年 第25回夏季デフリンピック競技大会(東京): 約70~80か国・地域から約3,000人の選手の参加が見込まれています。日本選手団は史上最多の273選手が選出されています。
パラリンピックの選手数
パラリンピックはオリンピックに次ぐ世界最大級のスポーツイベントであり、参加選手数もデフリンピックよりはるかに多くなります。
- 最近の夏季大会の傾向:
- 2024年 パリパラリンピック(予定): 約167か国・地域から約4,442名の選手が参加する予定です。日本選手団は175名(選手のみ)です。
- 2020年 東京パラリンピック(2021年開催): 162の国と地域から4,393名の選手が参加しました。
- 2016年 リオパラリンピック: 4,328名の選手が参加しました。
まとめると
- デフリンピック: 通常、2,000人台から3,000人台前半の選手が参加します。
- パラリンピック: 通常、4,000人台前半の選手が参加します。
このように、パラリンピックの方が参加国・地域数、選手数ともに規模が大きく、より多くの障害種別のアスリートが参加していることがわかります。
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デフリンピックにおける手話の重要性は非常に大きく、大会の根幹をなす要素と言えます。主な重要性は以下の通りです。
- コミュニケーションの基盤:
- 選手間のコミュニケーション: チームスポーツ(バスケットボール、バレーボール、サッカーなど)では、選手同士が手話を使って作戦を伝えたり、指示を出したりします。これは、聴覚に頼らないデフリンピックならではの、円滑なチームプレイに不可欠です。
- 選手と審判・コーチ・スタッフ間のコミュニケーション: 審判は手話でルール説明や判定を伝え、コーチは手話で選手にアドバイスや指示を送ります。大会運営スタッフも手話で選手を案内するなど、あらゆる場面で手話が主要なコミュニケーション手段となります。
- 情報保障: 競技結果、アナウンス、表彰式でのスピーチなども、手話通訳を通じて選手や観客に伝えられます。これにより、聴覚障害のある人々が大会の情報を完全に理解し、楽しむことができます。
- 競技の公平性:
- デフリンピックでは、競技中に補聴器や人工内耳などの聴覚補助具の装着が禁止されています。これは、すべての選手が「聞こえない」という同じ条件で競技に臨むことで、公平性を保つためです。このため、音に頼らない手話や視覚的な合図が必須となります。
- スタートの合図が旗や光に置き換えられるのと同様に、競技中の指示も手話で行われることで、聴覚に頼る選手とそうでない選手の間に差が生じないよう配慮されています。
- 文化とアイデンティティの尊重:
- 手話は単なるコミュニケーション手段ではなく、聴覚障害者の文化やアイデンティティの一部です。デフリンピックは、聴覚障害者が自らの言語と文化を共有し、誇りを持ってスポーツに取り組める場を提供します。
- 大会を通じて、手話の普及や理解を促進し、聴覚障害者コミュニティの連帯感を高める役割も果たしています。
- 安全性の確保:
- 競技中に緊急事態が発生した場合など、迅速かつ正確な情報伝達は選手の安全確保に直結します。手話を用いることで、聴覚に頼らずに危険を伝えたり、避難誘導を行ったりすることが可能になります。
このように、デフリンピックにおける手話は、単に言葉を伝えるだけでなく、競技の公平性、文化の尊重、安全性の確保といった多岐にわたる重要な役割を担っています。