発達障害のある方の「見えにくいハンディキャップ」は、多岐にわたり、周囲から理解されにくいがゆえに、日常生活や社会生活で大きな困難を引き起こすことがあります。以下にその例を挙げます。
1. コミュニケーションの困難さ
- 言葉の裏を読み取ることが難しい: 皮肉、冗談、比喩などを文字通りに受け取ってしまい、相手の意図を誤解することがあります。
- 暗黙のルールが理解できない: 職場の慣習、友人間の暗黙の了解など、言語化されない社会的なルールを理解したり、それに合わせて行動したりすることが難しい場合があります。
- 会話のキャッチボールが苦手: 自分の話したいことばかり話してしまったり、相手の話を遮ってしまったり、逆に会話の途中で何を話していいかわからなくなったりすることがあります。
- 非言語コミュニケーションの読み取り・発信の困難: 表情、声のトーン、ジェスチャーなどから相手の感情を読み取ることが苦手だったり、自分の感情を適切に表現することが難しかったりします。
2. 感覚の過敏さ・鈍感さ
- 特定の音や光、匂いなどに過敏: 周囲の音が耳障りに聞こえたり、蛍光灯の光がまぶしすぎたり、特定の匂いが耐え難かったりすることがあります。これにより、集中力の低下や疲労感、パニックを引き起こすことがあります。
- 痛覚や触覚の鈍感さ: 怪我に気づきにくい、服のタグが気にならないなど、感覚が鈍感な場合もあります。
- 特定の食感や味への強いこだわり: 食べられるものが限定されることがあります。
3. 注意の偏り・集中力の困難
- 注意の切り替えが難しい: 一つのことに集中しすぎて、他のことに注意が向かない(過集中)、または逆に注意が散漫になりやすく、目の前の作業に集中できないことがあります。
- マルチタスクが苦手: 複数のことを同時にこなすことが難しく、優先順位をつけるのに苦労することがあります。
- 忘れ物やなくし物が多い: 注意力が散漫なため、必要なものを忘れたり、どこに置いたかわからなくなったりすることがあります。
4. 時間感覚の困難
- 時間の見積もりが難しい: 作業にかかる時間を正確に見積もることが苦手で、時間に間に合わなかったり、逆に時間が余ってしまったりすることがあります。
- 計画を立てて実行することが難しい: 締切までに計画的に物事を進めるのが苦手で、直前になって慌ててしまうことがあります。
5. 感情のコントロールの困難
- 感情の起伏が激しい: ちょっとしたことで感情的になったり、怒りや不安が爆発したりすることがあります。
- 感情の表現が苦手: 自分の感情を適切に言葉で表現することが難しく、周囲に誤解されてしまうことがあります。
6. こだわりと融通の利かなさ
- 特定のルーティンへの強いこだわり: 決められた手順や習慣が変わると、強い不安を感じたり、混乱したりすることがあります。
- 予想外の変化への対応の困難: 予定の変更や不測の事態に柔軟に対応することが難しい場合があります。
- 完璧主義: 失敗を過度に恐れたり、完璧でないと気が済まない傾向があり、物事を始めるのに時間がかかったり、途中で投げ出してしまったりすることがあります。
7. 実行機能の困難
- 計画を立てて実行する能力の困難: 目標を立て、それに向けた具体的な計画を立て、実行し、評価するという一連のプロセスが苦手な場合があります。
- 問題解決能力の困難: 複雑な問題に対して、複数の解決策を検討し、最適なものを選ぶことが難しい場合があります。
これらの見えにくいハンディキャップは、外見からは分かりにくいため、「わがまま」「努力不足」「やる気がない」などと誤解され、人間関係や職場、学校でのトラブルの原因となることがあります。周囲の理解と適切なサポートが非常に重要となります。
・
・
・
実行機能の障害を持つ人々がタスクを管理するために、様々な工夫やツールを活用しています。主な方法を以下にまとめました。
1. タスクの細分化と具体化
- シングルタスク化: マルチタスクが苦手な場合が多いため、大きなタスクを細かく分解し、一つずつこなせるようにします。
- 具体的な行動に落とし込む: 「資料作成」のような漠然としたタスクではなく、「①必要な情報を集める」「②構成を考える」「③下書きをする」など、具体的な行動に分解します。
- 所要時間の見積もり: 各タスクにかかる時間を予測し、計画に組み込みます。日頃から作業時間をメモする習慣をつけると、見積もりの精度が向上します。
2. 可視化と外部化
- ToDoリストの活用: 期日までにこなすべき仕事をすべて書き出し、目に見える場所に貼ったり、デジタルツールで管理したりします。終わったタスクには線を引くなどして、達成感を視覚的に得られるようにします。
- スケジュールや締め切りの可視化: カレンダーアプリや手帳などを活用し、予定や締め切りを明確に表示します。
- メモの習慣化: 指示内容やアイデアなど、些細なことでもすぐにメモを取り、忘れないようにします。メモ帳を常に持ち歩く、スマートフォンやPCのメモ機能を使うなど、自分に合った方法を見つけることが重要です。
- タスク管理媒体の一元化: 複数のツールやメモに分散させず、できるだけ一つの媒体にまとめて管理することで、抜け漏れや紛失を防ぎます。
3. リマインダーとアラームの活用
- アラーム機能: 起床時間だけでなく、作業の開始時間や休憩時間、次のタスクへの移行など、様々なタイミングでアラームを設定します。
- リマインド機能: スマートフォンやPCのリマインダー機能、LINEのbotなどを活用し、忘れてはいけないことを通知してもらいます。
4. 環境調整とルーティン化
- 集中しやすい環境作り: 静かで気が散らない作業スペースを確保し、不必要なものは机の上に置かないなど、集中を妨げる要因を減らします。
- ルーティンの確立: 毎日決まった時間に特定の作業を行うなど、ルーティンを確立することで、実行機能への負担を減らし、自動的に行動できるようにします。
- 整理整頓の時間を設ける: 定期的にタスクや持ち物を整理する時間を作り、混乱を防ぎます。
5. 周囲のサポートとコミュニケーション
- 周囲への協力依頼: タスクを忘れやすい、うっかりミスが多いなどの特性を周囲に伝え、リマインドをお願いするなど、協力を得られるようにします。
- 具体的な指示を求める: 抽象的な指示ではなく、「いつ、どこで、何を、どのように」といった具体的な指示を求めることで、タスクへの見通しを立てやすくします。
- こまめな声かけと確認: 作業中にまめに声をかけてもらったり、一つ一つの工程が終わるごとに次の作業について確認してもらったりすることで、混乱を防ぎ、スムーズに作業を進められるようになります。
- 休憩の取り方: 長時間の集中が難しい場合があるため、タスクごとにこまめに休憩を挟むように計画します。
6. タスク管理ツールの活用
実行機能の障害を持つ方向けに開発されたり、特に役立つとされるアプリやツールも多数あります。
- コンダクター(CONDUCTOR): 発達障害当事者のアイデアから生まれたタスク管理アプリで、タイムラインやタイムバーで時間を見える化し、サブタスク設定で達成感を高めます。
- タスクペディア: 頭の中の「ごちゃごちゃ」を「見える化」してスッキリさせるタスク管理支援ツールで、スモールステップでタスクを細分化し、一歩目の負担を減らすことを重視しています。
- ルーチンタイマー: ADHDの特性を持つ方向けに、ルーティンを完遂させるのを助けるアプリで、設定した所要時間をもとに音声でアナウンスしてくれます。
- ClickUp、TickTick、Numo ADHD、カワイイタスク、ゴブリン・ツールズなど: AIを活用してタスクを細分化したり、優先順位付けをサポートしたり、集中タイマー機能を持つなど、様々な特徴を持つタスク管理ツールがあります。
これらの方法は、個人の特性や状況に合わせて組み合わせて活用することで、実行機能の困難さを補い、タスク管理を円滑に進めることができます。