脳性麻痺(アテトーゼ型)の人が外出する際の苦労
脳性麻痺のアテトーゼ型は、不随意運動が特徴であり、この運動は予測不能でコントロールが難しいという特性があります。そのため、外出時には様々な苦労が生じます。以下に主な点を挙げます。
1. 移動の困難さ
- 不安定な歩行と転倒のリスク: 不随意運動により、まっすぐ歩くことが難しく、バランスを崩しやすいため、転倒のリスクが非常に高いです。特に、人混みや段差の多い場所では危険が増します。
- 車椅子利用の困難さ: 不随意運動が激しい場合、車椅子に座っていても体が安定せず、ずり落ちたり、腕や足が意図せず動いてしまうことがあります。電動車椅子の場合でも、ジョイスティック操作が困難な場合があります。
- 公共交通機関の利用:
- 電車・バス: 乗降時に車体との隙間や段差を乗り越えるのが困難です。また、走行中の揺れで体が安定せず、他の乗客にぶつかってしまったり、手すりを掴むのが難しい場合があります。
- タクシー: 車への乗り降りやシートベルトの装着がスムーズにできないことがあります。
- 介助の必要性: 上記の理由から、常に介助者のサポートが必要となることが多く、一人での外出が極めて困難になります。
2. コミュニケーションの困難さ
- 構音障害: アテトーゼ型の場合、口や舌の不随意運動により、発語が不明瞭になる構音障害を伴うことが多く、自分の意思を相手に正確に伝えることが難しい場合があります。
- 意思疎通の誤解: 周囲の人が構音障害を理解せず、意思疎通がうまくいかないことがあります。急いでいる状況や騒がしい場所では、さらに困難が増します。
- 筆談・コミュニケーション補助具の利用: 筆談や、コミュニケーション補助具(VOCAなど)を使用する場合でも、手や指の不随意運動により操作が難しいことがあります。
3. 環境への適応の困難さ
- 人混み: 不随意運動が激しいと、人混みの中で他者に接触してしまうリスクが高まり、周囲の視線を感じやすいこともあります。また、急な動きに対応しにくいため、ぶつかってしまうこともあります。
- 段差・傾斜: 少しの段差や傾斜でも、不随意運動によりバランスを崩しやすいため、移動が非常に困難になります。
- 狭い通路・出入口: 車椅子での移動の場合、狭い通路や出入口では他の人に迷惑をかけたり、通過自体が困難な場合があります。
- 多目的トイレの利用: 不随意運動があるため、介助なしで便座に座ったり、衣服を上げ下げしたりすることが難しい場合があります。多目的トイレが少ない場所では特に困ります。
- 飲食店・店舗の利用: テーブルやレジカウンターの高さが合わなかったり、店内の通路が狭かったりする場合、利用が困難です。
4. 精神的・心理的な苦労
- 周囲の視線や誤解: 不随意運動による独特の動きは、周囲から奇異な目で見られたり、酔っていると誤解されたりすることがあります。
- 外出への億劫さ: 上記の物理的・コミュニケーション上の困難さから、外出すること自体が億劫になり、社会との接点が減ってしまうことがあります。
- 疲労感: 不随意運動は常に体を動かしているため、日常生活で非常に多くのエネルギーを消費します。外出時はさらに心身の負担が大きくなり、強い疲労感を伴います。
- 介助者への負担: 介助者は常に本人をサポートする必要があり、精神的・肉体的な負担が大きくなります。
5. その他の苦労
- 食事の困難: 不随意運動により、食器をうまく使えなかったり、食べ物をこぼしてしまったりすることがあります。
- 金銭の支払い: 不随意運動により、財布から小銭を取り出したり、紙幣を渡したりすることが難しい場合があります。
- 緊急時の対応: 予期せぬ状況や緊急時に、素早く行動したり、周囲に助けを求めたりすることが困難な場合があります。
これらの苦労を軽減するためには、社会全体の理解促進、バリアフリー化の推進、適切な支援機器の開発・普及、介助サービスの充実などが不可欠です。
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アテトーゼ型脳性麻痺の人は、不随意運動によって常に体が動いているため、通常の動作に比べてはるかに多くのエネルギーを消費し、結果として強い疲労を感じやすいという特徴があります。この疲労を軽減するためには、様々なアプローチを組み合わせることが重要です。
1. 筋緊張のコントロールと緩和
アテトーゼ型は筋緊張が変動することが特徴であり、不随意運動による疲労は筋緊張の過度な高まりと関連しています。
- 薬物療法:
- 経口筋弛緩薬: ジアゼパム、チザニジン、バクロフェンなど、全身の筋緊張を和らげる薬が処方されることがあります。眠気などの副作用に注意が必要です。
- ボツリヌス療法: 特定の筋肉に直接注射することで、その筋肉の緊張を一時的に緩和します。効果は数ヶ月持続し、その間にリハビリを行うことで効果を高めることができます。
- バクロフェン髄腔内投与療法 (ITB療法): 重度の全身性筋緊張がある場合に、脊髄周囲に直接バクロフェンを投与するポンプを体内に埋め込む治療法です。経口薬よりも少ない量で効果が得られ、全身性の副作用が少ないのが特徴です。
- 理学療法・作業療法:
- ストレッチと関節可動域訓練: 固まりやすい筋肉を柔軟に保ち、関節の動きを良くすることで、不随意運動による身体への負担を軽減します。
- 姿勢保持とポジショニング: 適切な姿勢を保つためのクッション、装具、座位保持装置などを活用し、身体の安定性を高めることで、不必要な筋活動を減らし、疲労を軽減します。特に、休息時の快適な姿勢は重要です。
- 筋力強化(選択的): 必要な筋力を強化することで、より効率的な動作が可能になり、余分なエネルギー消費を抑えることができます。ただし、不随意運動を悪化させないよう、専門家による慎重な指導が必要です。
- バランス訓練: バランス能力を高めることで、転倒のリスクを減らし、移動時の不安や疲労を軽減します。
2. 日常生活における工夫
- 休息と睡眠の確保: 不随意運動によるエネルギー消費が大きいため、質の良い十分な休息と睡眠が不可欠です。日中に適度な休憩を挟むことも重要です。
- 生活環境の整備:
- バリアフリー化: 自宅や外出先で段差をなくす、手すりを設置するなど、移動をスムーズにする工夫をすることで、不必要なエネルギー消費を抑えられます。
- 補助具の活用: 車椅子、歩行器、杖、コミュニケーション補助具など、必要に応じて適切な補助具を活用することで、動作の効率を高め、疲労を軽減できます。
- ユニバーサルデザインの活用: 開けやすいドアノブ、操作しやすいスイッチなど、誰もが使いやすいデザインの製品を選ぶことも有効です。
- 活動量の調整: 無理のない範囲で活動量を調整し、疲れを感じる前に休憩を取るなど、自己管理が重要です。過活動はかえって疲労を増大させます。
- 食事の工夫:
- 高エネルギー食: 不随意運動によるエネルギー消費が多いため、高カロリーで栄養価の高い食事を意識的に摂ることが重要です。
- 食べやすい工夫: 食べやすい形態の食事、滑りにくい食器、自助具などを活用し、食事にかかるエネルギーを節約します。
3. ストレスマネジメント
- 精神的安定: ストレスや緊張は不随意運動を悪化させ、疲労を増大させる可能性があります。リラックスできる時間を作り、ストレスを軽減する工夫が大切です。
- 心理的サポート: カウンセリングやサポートグループなどを利用して、精神的な負担を軽減することも有効です。
4. その他
- 温熱療法・マッサージ: 温めたり、マッサージを受けたりすることで、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進し、疲労感を軽減する効果が期待できます。訪問マッサージも選択肢の一つです。
- 水中運動: 水中では浮力が働くため、関節への負担が少なく、不随意運動による転倒のリスクも低減されます。全身運動が可能で、リラックス効果も期待できます。
- チームアプローチ: 医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、ソーシャルワーカーなど、多職種の専門家が連携してサポートすることで、より包括的な疲労軽減策を立てることができます。
アテトーゼ型脳性麻痺の疲労軽減は、個々の状態や不随意運動の程度によって最適な方法が異なります。専門家と相談しながら、最も効果的な方法を見つけ、日常生活に取り入れていくことが大切です。