障害者のための避難シミュレーションは必須です
はい、障害のある方が安全に避難できるように、避難方法をシミュレーションしておくべきです。
これは非常に重要で、災害時の障害者の安全確保において不可欠な準備と言えます。
なぜ避難シミュレーションが必要なのか
- 個別のニーズへの対応: 障害の種類や程度は多様であり、それぞれ異なる避難経路や介助方法が必要になります。事前にシミュレーションを行うことで、個々のニーズに合わせた具体的な計画を立てることができます。
- 危険の特定と排除: シミュレーションを通して、避難経路上の障害物、段差、狭い場所、暗がりなどの危険箇所を特定し、改善策を講じることが可能です。
- 介助者の役割分担と訓練: 避難時には、家族、隣人、地域のボランティアなど、周囲の人の協力が不可欠です。シミュレーションを行うことで、誰がどのような介助を行うのかを明確にし、介助者も実際の動きを練習することができます。
- 避難用品の確認: 避難時に必要な器具(車椅子、杖など)や非常持ち出し品が適切に準備されているか、機能するかを確認する良い機会にもなります。
- 心理的準備: 実際に避難する状況を経験することで、障害者本人も介助者も、いざという時の不安を軽減し、落ち着いて行動できるようになります。
- 地域との連携強化: 地域や自治体、福祉施設などと連携してシミュレーションを行うことで、地域全体で障害者を支える体制を構築できます。
シミュレーションで考慮すべき点
- 多様なシナリオ: 地震、火災、水害など、様々な種類の災害を想定したシミュレーションを行うことが望ましいです。
- 時間帯: 昼間だけでなく、夜間や早朝など、介助者が少ない時間帯での避難も考慮に入れる必要があります。
- 避難経路の複数確保: 一つの経路が使えない場合に備え、複数の避難経路を検討し、確認しておくことが重要です。
- 情報伝達手段: 視覚・聴覚に障害のある方への情報伝達方法も考慮に入れる必要があります。
障害のある方が安心して暮らせる社会を作るためにも、災害への備えとしての避難シミュレーションは、積極的に取り組むべき課題です。
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障害者の避難における具体的な課題は多岐にわたりますが、大きく分けて「情報」「移動」「避難生活」「周囲の理解」の4つの側面に集約できます。それぞれの詳細と、障害の種類に応じた具体的な課題を以下に挙げます。
1. 情報の課題
災害発生時、障害のある方々にとって、必要な情報が適切な形で届かないことが大きな課題です。
- 情報へのアクセス困難:
- 聴覚障害: 音声による緊急放送や避難情報が聞こえない。手話通訳や要約筆記の提供が遅れたり、十分でなかったりする。
- 視覚障害: 掲示物や地図などの視覚情報が読めない。点字や拡大文字での情報提供が少ない。
- 知的障害・精神障害: 専門用語が多い情報や複雑な情報を理解しにくい。
- 共通: 停電時など、情報源が限られる中で、携帯電話やインターネットへのアクセスが困難になる場合がある。
- 適切な情報提供の不足:
- 災害情報だけでなく、医療や福祉に関する情報(例えば、かかりつけ医の状況、薬の入手方法、福祉サービスの再開見込みなど)が不足しがち。
- 避難所の場所、開設状況、バリアフリー状況などの詳細情報がリアルタイムで入手しにくい。
2. 移動の課題
災害発生直後の避難行動、そして避難所への移動において、物理的・環境的な障壁が課題となります。
- 物理的なバリア:
- 肢体不自由(車椅子使用者など): 段差、狭い通路、瓦礫、損壊した道路などが移動を困難にする。避難所の入り口やトイレに段差がある、通路が狭いなど、バリアフリーが不十分な場合が多い。
- 視覚障害: 普段利用している点字ブロックや手すりなどが使えない、または損壊している可能性がある。誘導者がいないと移動が困難。
- 重症心身障害: 医療機器を装着している場合、移動そのものが困難で、機器の破損リスクもある。
- 時間的制約:
- 自力での移動が困難なため、健常者よりも避難に時間がかかる。津波など、緊急性の高い災害では命に関わる。
- 介助者の確保が難しい場合、迅速な避難ができない。
- 介助者の不足:
- 家族以外に介助者がいない場合、災害時に適切な介助を受けられない可能性がある。
- 災害時には介助者も被災者となるため、十分な介助体制が取れないことがある。
3. 避難生活の課題
避難所にたどり着いても、そこでの生活には多くの課題があります。
- 避難所の環境:
- バリアフリーの不十分さ: 車椅子での移動が困難な通路、段差のあるトイレ、シャワー設備の不足など。
- プライバシーの欠如: 大部屋での生活は、オムツ交換や経管栄養注入など、プライバシーが守られにくい。精神的なストレスも大きい。
- 医療・福祉サービスの不足: 日常的に必要な医療的ケア(人工呼吸器、透析など)や福祉サービス(ヘルパーなど)が途絶える可能性。医薬品や福祉用具の確保が困難。
- 騒音・人混みへの配慮不足: 知的障害や精神障害のある方にとって、避難所の騒音や人混みは大きなストレスとなり、不穏状態やパニックを引き起こすことがある。
- 衛生環境: 特に内部障害などで頻繁なトイレ利用が必要な場合、避難所のトイレ環境は不便。
- 食事・物資の配給:
- アレルギーや嚥下障害など、個別の食事ニーズへの対応が難しい。
- 配給場所への移動が困難な場合、物資を受け取れないことがある。
- 補聴器の電池や車椅子のタイヤ、人工肛門装具など、障害特性に応じた特殊な物資の確保が困難。
- 孤立・精神的負担:
- 周囲とのコミュニケーションが取りにくい、自身の状況を伝えにくいことから、孤立感を深める。
- 障害に対する無理解や偏見から、不当な扱いを受けたり、肩身の狭い思いをしたりすることがある。
- 環境の変化や慣れない生活によるストレス、不安が大きい。
4. 周囲の理解と支援体制の課題
障害者のニーズに対する周囲の理解不足や、支援体制の不備も大きな課題です。
- 災害時要援護者リストの不備:
- 地域の防災計画に障害者のニーズが十分に反映されていない。
- 要援護者リストが作成されていても、個人情報の問題で共有が進まない、または最新の情報ではない場合がある。
- 支援者側の知識・経験不足:
- 一般の避難所運営者やボランティアが、障害特性に応じた支援方法を知らない。
- 「助けてほしい」と声を上げられない障害者(特に見えない障害)の存在に気づきにくい。
- 制度・行政の課題:
- 福祉避難所の数が不足している、または情報が周知されていない。
- 既存の支援サービスが災害時に機能しなくなる場合がある(例:ヘルパーの派遣停止)。
- 罹災証明の取得や住宅再建など、災害後の手続きが複雑で、支援が必要となる。
これらの課題を克服するためには、事前のシミュレーションや個別避難計画の作成、地域住民への啓発、そして行政と連携したバリアフリー化の推進などが不可欠です。
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障害者が安全に避難できるよう、実際の避難訓練を行う際には、健常者の訓練とは異なる様々な配慮と工夫が必要です。以下に、具体的な訓練方法のポイントを挙げます。
1. 個別避難計画の確認と活用
- 訓練前に計画を再確認: 訓練実施前に、参加する障害者それぞれの「個別避難計画」を必ず確認します。移動手段、必要な介助、医療的配慮、服用薬、連絡先などを把握します。
- 介助者との連携: 計画に基づき、訓練時の介助者(家族、支援者、地域の協力者など)を明確にし、役割分担を再確認します。
2. 多様な障害特性への配慮
それぞれの障害特性に合わせた情報伝達、誘導、介助方法を取り入れます。
- 視覚障害者:
- 声かけと状況説明: 「〇〇さんがいます」「これから〇〇へ向かいます」など、必ず声かけをして状況を具体的に説明します。
- 誘導方法: 誘導者は半歩斜め前を歩き、腕や肘を持ってもらいます。狭い場所や段差、方向転換などでは、その都度状況を言葉で説明します。
- 触覚を活用: 避難経路上の手すりや壁などに触れてもらい、誘導を助ける工夫も有効です。
- 情報伝達: 避難所でのレイアウトやトイレの場所なども、口頭で詳細に説明し、必要であれば実際に案内します。
- 聴覚障害者:
- 視覚による情報伝達: 筆談、身振り手振り、ボードへの記載、スマートフォンの文字入力などを活用します。
- 口形を明確に: 話す際は口元を隠さず、ゆっくりと、大きく話すことを意識します。
- 手話通訳者の配置: 可能であれば、手話通訳者を配置し、情報伝達を円滑にします。
- 光や振動: 緊急時に光(点滅など)や振動で危険を知らせる工夫も検討します。
- 肢体不自由者(車椅子使用者など):
- 経路の確認: 段差、傾斜、狭い通路など、移動を妨げる箇所の有無を事前に確認し、代替経路も検討します。
- 介助方法の練習: 車椅子の持ち上げ方、安全な階段昇降(車椅子ごと持ち上げる、または安全な場所で降りて介助するなど)、介助者の姿勢などを繰り返し練習します。
- 福祉用具の活用: 担架、避難用スロープ、非常用車椅子など、避難に必要な器具を実際に使用してみます。
- 休憩場所の確保: 長距離の移動を想定し、途中で休憩できる場所や介助者が交代できる場所を確保します。
- 知的障害者・精神障害者:
- 安心できる環境: 訓練であることを事前に伝え、安心できる声かけや誘導を心がけます。
- シンプルな指示: 指示は簡潔で分かりやすく、具体的な行動を示します。「あっちへ行く」ではなく「階段を3段降ります」のように伝えます。
- ヘルプカードの活用: ヘルプカードを活用し、周囲に障害特性や配慮してほしいことを伝えられるようにします。
- 避難所の環境配慮: 騒音や人混みを避ける工夫(パーテーションの設置、別室の確保など)も訓練時に検討します。
3. 訓練シナリオの工夫
- 複数のシナリオ: 地震、火災、水害など、複数の災害の種類を想定した訓練を行います。
- 時間帯の考慮: 昼間だけでなく、夜間や早朝、休日など、介助者が少ない時間帯の訓練も行うと、より実践的な対応力が身につきます。
- 情報途絶の想定: 停電や通信障害が発生した場合の情報伝達方法も訓練に取り入れます。
- 避難場所までの移動: 自宅や施設から一時避難場所、そして福祉避難所への移動を実際に試す訓練が理想的です。
- 避難所での生活体験: 可能であれば、福祉避難所で簡易ベッドやパーテーションを設営し、数時間程度の避難所生活を体験する訓練も有効です。
4. 地域の協力と連携
- 地域住民の参加: 自主防災組織、民生委員、地域住民など、地域の方々に訓練への参加を呼びかけ、障害者への理解と支援意識を高めます。
- 関係機関との連携: 消防、市町村の防災担当部署、福祉施設、医療機関などと連携し、より専門的な視点からのアドバイスや協力体制を構築します。特に、福祉避難所の職員は、具体的な開設・運営訓練を実施することが重要です。
- 要援護者名簿の活用: 地域で共有されている「災害時要援護者名簿」と連携し、訓練参加を促したり、安否確認のシミュレーションを行ったりします。
5. 訓練後の振り返り
- 反省会の実施: 訓練終了後には、参加者全員で反省会を行い、良かった点、課題、改善点を洗い出します。
- 個別意見の聞き取り: 特に障害者本人や介助者からは、具体的な困りごとや改善してほしい点を丁寧に聞き取ります。
- 計画の見直し: 訓練で明らかになった課題に基づき、個別避難計画や地域の防災計画を見直し、より実効性のあるものに改善していきます。
訓練を継続的に
避難訓練は一度行ったら終わりではありません。定期的に繰り返し実施することで、いざという時にスムーズに行動できるようになります。特に、人の入れ替わりがある施設などでは、継続的な訓練が非常に重要です。