障害者が運転する車が自動車事故を起こしたらどうすればいい?

障害者が運転する車が自動車事故を起こした場合でも、基本的には通常の自動車事故と同様に対応することになります。ただし、障害の状況によっては、追加で考慮すべき点や利用できる支援制度があります。

以下に、対応のステップと関連する情報を示します。

1. 事故直後の対応(最重要)

これは障害の有無に関わらず共通です。

  • 安全確保: まずは二次被害を防ぐため、安全な場所に移動できる場合は移動し、ハザードランプを点灯させるなどして周囲に事故を知らせます。
  • 負傷者の確認と救護: 自分や同乗者、相手方などに負傷者がいないか確認し、負傷者がいる場合はすぐに119番通報して救急車を呼びます。障害者の方が運転している場合、身体的な負担が大きい可能性があるので、特に注意が必要です。
  • 警察への連絡: 事故の大小に関わらず、必ず110番通報して警察に連絡します。事故証明書を発行してもらうためにも重要です。障害の内容によっては、状況説明が難しい場合もあるため、同乗者や関係者に協力を求めることも検討してください。
  • 事故状況の記録:
    • 事故日時、場所
    • 相手方の氏名、連絡先、車のナンバー、保険会社名
    • 目撃者がいればその氏名、連絡先
    • 事故状況の写真(車の損傷、道路状況、信号など)
    • ドライブレコーダーの映像も保存しておく
  • 保険会社への連絡: 自分の加入している保険会社に速やかに連絡し、事故の状況を伝えます。

2. その後の手続きと考慮事項

  • 責任能力について:
    • 運転していた障害の内容によっては、事故発生時の責任能力が問題となる場合があります。精神上の障害により責任能力を欠いた人が他人に損害を与えた場合、原則として賠償責任を負わないと法律で定められています。
    • ただし、てんかんなど意識障害をもたらす疾患を患っており、発作を予測できたにも関わらず運転を開始したような場合には、過失が認められ、責任を問われる可能性があります。
    • 監督義務者がいる場合は、監督義務者が賠償責任を負うこともあります。
    • 人身事故の場合は、被害者保護の観点から自賠責保険が適用されることが多く、たとえ運転者に責任能力がなかったとしても、自賠責保険からの保険金は支払われます。
  • 保険の適用:
    • 一般の自動車保険(任意保険)は、障害の有無に関わらず適用されます。ただし、契約内容によっては特約などが必要な場合もありますので、加入している保険会社に確認が必要です。
    • 後遺障害が残った場合、自賠責保険や任意保険から後遺障害等級に応じた慰謝料や逸失利益(事故がなければ得られたはずの利益)が支払われます。
    • 障害者手帳や障害年金など、公的な支援制度との関係も考慮する必要があります。交通事故による損害賠償金を受け取っている期間は障害年金の受給が制限される場合があります。
  • 後遺障害の認定:
    • 事故により、すでに障害がある方がさらに障害を負った場合や、新たに後遺障害が残った場合は、適切な後遺障害等級の認定を受けることが重要です。これにより、受けられる補償内容が大きく変わります。
    • 認定手続きは複雑なため、弁護士や専門家のサポートを受けることをお勧めします。
  • 福祉サービスと支援:
    • 事故による後遺症などで、生活に支障が生じた場合、障害福祉サービスや公的な支援制度を利用できる可能性があります。
    • 具体的には、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳の申請、介護相談、訪問支援、療護施設の利用などが挙げられます。
  • 専門家への相談:
    • 弁護士: 事故の過失割合、損害賠償請求、後遺障害の認定手続きなど、法的な問題については弁護士に相談することが最も確実です。交通事故に詳しい弁護士に相談することで、適切なアドバイスとサポートが得られます。
    • 独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA:ナスバ): 自動車事故の被害者やその家族に対して、介護料の支給、訪問相談、交流会の実施、療護施設の運営など、さまざまな支援を行っています。
    • 交通事故紛争処理センターや日弁連交通事故相談センター: 交通事故に関する無料相談や示談斡旋などを行っています。
    • 各自治体の障害福祉課: 障害者手帳の申請やその他の福祉サービスについて相談できます。

重要なポイント

  • 早期の相談: 事故が発生したら、できるだけ早く警察、保険会社、そして必要であれば弁護士や支援団体に相談することが重要です。
  • 情報収集: 事故の状況、自身の障害、利用可能な支援制度に関する情報を積極的に収集しましょう。
  • 記録の徹底: 病院での診察記録、治療費の領収書、事故状況の写真など、あらゆる関連書類をきちんと保管しておくことが大切です。

障害者が運転する車の事故であっても、まずは冷静に、上記の手順に沿って対応を進めることが大切です。そして、必要に応じて専門機関や支援団体のサポートを積極的に活用してください。

事故の責任が運転者の障害に影響することはあります。

具体的には、以下の点が考慮される可能性があります。

  1. 責任能力の有無:
    • 民法では、精神上の障害により責任能力を欠く人が他人に損害を加えた場合、その賠償責任を負わないと定められています(民法713条)。
    • もし運転者が事故発生時に、その障害によって「自己の行為の責任を弁識する能力」を欠いていたと判断されれば、民事上の損害賠償責任を負わない可能性があります。
    • ただし、この「責任能力を欠く」状態は厳しく判断され、単に障害があるだけでは認められません。また、一時的にその状態を招いた場合(例えば、病気の発作を予見できたにもかかわらず運転したなど)は、責任を負うことがあります。
  2. 過失の有無:
    • 運転者の障害が、事故発生の直接的な原因となった場合、その障害の状況が過失の有無や程度に影響を与える可能性があります。
    • 例えば、てんかんなどの持病があり、発作が起こる可能性を認識していたにもかかわらず運転し、その発作が原因で事故を起こした場合、運転を開始したこと自体に過失が認められることがあります。
    • 一方で、予見不可能な突然の体調変化や、障害による予期せぬ反応が事故につながった場合など、過失が認められない、あるいは軽減される可能性もゼロではありません。しかし、運転には常に注意義務が伴うため、この点は慎重に判断されます。
  3. 監督義務者の責任:
    • もし運転者に責任能力がないと判断された場合、その運転者を監督する義務がある人(親権者や成年後見人など)が、その監督義務を怠ったとして損害賠償責任を負う可能性があります(民法714条)。
  4. 自賠責保険の適用:
    • 人身事故の場合、自賠責保険は被害者救済を目的としているため、運転者の責任能力の有無にかかわらず、基本的に保険金が支払われます。これは、民法の特則として、被害者の立証責任を軽減し、迅速な救済を図るためです。
  5. 任意保険の適用:
    • 任意保険は、契約内容によりますが、通常、運転者の障害の有無にかかわらず適用されます。ただし、飲酒運転や無免許運転など、保険約款で定められた免責事由に該当する場合は保険金が支払われません。

まとめると、運転者の障害が事故の責任に影響するかどうかは、その障害が事故発生にどのように関連したか、そして運転者が事故時に「責任能力」を有していたかどうかが重要な判断基準となります。

複雑なケースが多いため、このような状況に直面した場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談し、具体的な状況を説明してアドバイスを受けることが最も重要です。

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