障害者でも使いやすい電子マネーはあるんですか?  どんなサービスがありますか?

障害をお持ちの方でも使いやすい電子マネーは、その方の障害の種類や程度によって最適なものが異なります

障害の種類別に見る使いやすさ

1. 視覚障害をお持ちの方

  • 音声読み上げ機能対応のアプリ:
    • PayPay: ボイスオーバー(iOSの音声読み上げ機能)に対応しており、一人での買い物でも比較的使いやすいとされています。ただし、アプリを立ち上げてバーコード画面を出す手間があるという声もあります。
    • その他、視覚障害者向けの補助アプリ: Seeing AIやEnvision AI(AIがカメラで捉えた情報を音声で読み上げる)、TapTapSee(写真を撮って対象物を音声で読み上げる)、NaviLens(QRコードのようなタグを読み取り音声案内をする)など、電子マネーアプリと併用することで利便性を高められるものがあります。
  • かざすだけで決済できるタイプ:
    • Suica、PASMOなどの交通系ICカード: ロック解除なしでかざすだけで決済できるため、非常に便利です。Apple Watchなどで利用すれば、さらに手軽になります。ただし、タッチデバイスの位置を店員に確認する必要がある場合があります。

2. 肢体不自由をお持ちの方

  • 操作が簡単なもの:
    • 交通系ICカード(Suica、PASMOなど): カードをかざすだけで決済が完了するため、物理的な操作が少なく済みます。
    • スマホ決済(PayPayなど): スマートフォンでバーコードやQRコードを表示させるタイプは、端末操作が中心となるため、持ち方や指の動きに制約がある場合でも比較的利用しやすい可能性があります。
  • ユニバーサルデザインの自動販売機など: 電子マネーに対応した自動販売機の中には、低位置にボタンが配置されたり、手すりやミニテーブルが付いたりしているものもあります。

3. 知的障害をお持ちの方

  • シンプルな操作性のもの:
    • プリペイド式の電子マネー(Suica、PASMO、nanaco、WAON、楽天Edyなど): 事前にチャージした分だけ使えるため、使いすぎの心配がなく、残高管理がしやすいというメリットがあります。
  • 操作が直感的に分かりやすいもの: 絵やアイコンが大きく、操作手順が少ないものが良いでしょう。
  • 家族や支援者との連携: 家族や支援者がチャージや残高確認をサポートすることで、安心して利用できる場合があります。

4. 聴覚障害をお持ちの方

  • 視覚情報が分かりやすいもの:
    • スマートフォン決済(PayPay、LINE Pay、楽天ペイなど): 決済完了画面や決済音の視覚的な表示があれば、問題なく利用できます。
    • レジの表示画面: 支払い金額や決済完了の表示が明確な店舗であれば、スムーズに利用できます。
  • 店員とのコミュニケーションを補完する工夫: 筆談や指差し、スマートフォンの画面表示などを活用することで、電子マネーの利用に関する意思疎通を円滑にできます。

共通して使いやすい電子マネーサービス

1. 交通系ICカード(Suica、PASMOなど)

  • メリット:
    • 交通機関での利用: 障害者割引が適用される「障がい者用Suica」や「障がい者用PASMO」があり、第1種身体障害者や第1種知的障害者とその介護者が利用できます。これにより、公共交通機関での移動が便利になります。
    • 決済のしやすさ: 多くの店舗で対応しており、かざすだけで決済できる手軽さが魅力です。
    • チャージのしやすさ: 駅の券売機やコンビニなどで現金チャージが可能です。
  • デメリット:
    • 「障がい者用Suica」「障がい者用PASMO」は、全国相互利用サービスの対象外であり、利用可能エリアが限られています。電子マネーとしてのお買い物は全国相互利用可能ですが、割引運賃の適用はエリア内のみです。
    • 購入時に手帳の提示など、手続きが必要になります。

2. コード決済(PayPay、LINE Pay、楽天ペイなど)

  • メリット:
    • スマートフォンの機能活用: スマートフォンの音声読み上げ機能(VoiceOver、TalkBackなど)と連携することで、視覚障害者の方も利用しやすくなります。
    • ポイント還元: 各種キャンペーンやポイント還元でお得に利用できる機会が多いです。
    • 個人間送金: 割り勘などで個人間送金ができるサービスもあります。
  • デメリット:
    • スマートフォン操作が必要なため、指先の動きに制限がある方や、スマートフォンの操作に慣れていない方にはハードルが高い場合があります。
    • 決済時にアプリの起動やバーコード・QRコードの表示が必要になる場合があります。

3. プリペイド型電子マネー(nanaco、WAON、楽天Edyなど)

  • メリット:
    • 使いすぎの心配がない: 事前にチャージした金額しか使えないため、残高管理がしやすいです。
    • ポイントが貯まる: 提携店舗での利用でポイントが貯まりやすいです。
  • デメリット:
    • 現金チャージの手間がかかることがあります。
    • 交通系ICカードのように公共交通機関で直接割引が適用されるわけではありません。

障害の種類や個々の状況によって最適な電子マネーは異なりますが、一般的には以下の点が重要になります

  • 操作のシンプルさ: かざすだけ、または数タップで完了するものが使いやすいです。
  • 音声ガイダンスや読み上げ機能の有無: 視覚情報に頼らずに利用できる機能があると便利です。
  • 残高確認のしやすさ: 簡単な方法で残高を確認できると安心です。
  • チャージのしやすさ: 現金チャージのしやすさや、オートチャージ機能の有無も考慮に入れると良いでしょう。
  • サポート体制: 困ったときに問い合わせできる窓口や、サポート体制が整っているかも重要です。

ご自身の障害の特性に合わせて、実際にいくつかの電子マネーを試してみて、最も使いやすいものを見つけることをお勧めします。また、各サービスの公式ウェブサイトや、障害者向けの情報を発信している団体のウェブサイトなどを参考に、最新情報を確認することも大切です。

「どの電子マネーが最も多くの障害者支援を提供しているか」という質問に対して、明確に「これ」と一つに絞り込むのは難しいです。なぜなら、「障害者支援」の内容が、障害の種類や個々のニーズによって大きく異なるためです。

しかし、現時点での情報や各電子マネーの特性を考慮すると、以下の点が挙げられます。

交通系ICカード(Suica、PASMOなど)

最も直接的で広範な「障害者割引」という支援を提供しています。

  • 割引運賃の自動適用: 第1種身体障害者、第1種知的障害者、そして一部の地域では精神障害者(令和7年4月1日からPASMOで対応開始)とその介護者が、鉄道やバスに乗車する際に自動改札機で割引運賃が適用される「障がい者用Suica」や「障がい者用PASMO」などの特別割引用ICカードが提供されています。これは、障害者手帳を毎回提示する手間を省き、スムーズな移動を可能にする大きな支援です。
    • Suica: 原則として介護者との同時利用が必要な場合があります。
    • PASMO: 条件を満たせば障害者単独での割引利用が可能なケースもあります。
  • 利用可能エリアの広さ: 交通系ICカードは全国相互利用が可能で、交通機関だけでなくコンビニやスーパーなどでも電子マネーとして利用できます。
  • 操作のシンプルさ: カードをかざすだけで決済が完了するため、肢体不自由の方や、複雑な操作が苦手な方にとって非常に使いやすいです。
  • 「ミライロID」との連携(一部): 一部の交通事業者では、デジタル障害者手帳アプリ「ミライロID」と連携して、割引適用をスムーズに行えるサービスも検討・導入されています。

ただし、注意点もあります。

  • 「障がい者用Suica」「障がい者用PASMO」などは、あくまで交通運賃の割引が主な目的であり、電子マネーとしてのお買い物機能自体に特別な「障害者支援機能」が付与されているわけではありません。
  • 購入や更新には障害者手帳の提示など、所定の手続きが必要です。

コード決済(PayPay、LINE Pay、楽天ペイなど)

間接的ながら、スマートフォンのアクセシビリティ機能と連携することで、多くの障害者にとって利用の幅を広げています。

  • 音声読み上げ機能(VoiceOver/TalkBack)への対応: 多くのコード決済アプリは、スマートフォンのOSが提供する音声読み上げ機能に対応しており、視覚障害のある方が音声ガイダンスに従って操作することが可能です。
  • 視覚的な分かりやすさ: 決済完了画面やQRコードの表示など、視覚情報で決済状況を確認できます。
  • 個人間送金: 友人との割り勘など、個人間での送金が手軽にできる点は、障害のある方にとっても利便性が高いでしょう。
  • キャンペーンやポイント還元: お得なキャンペーンやポイント還元が頻繁に実施されており、経済的なメリットがあります。

支援というよりは、汎用的な使いやすさの向上という側面が強いです。

デジタル障害者手帳アプリ「ミライロID」

直接的な電子マネーではありませんが、様々な電子マネーサービスや店舗での障害者割引利用を円滑にする「インフラ」として、非常に重要な役割を担っています。

  • 障害者手帳のデジタル化: 障害者手帳の情報をスマートフォンで表示できるため、手帳を提示する手間を省き、スムーズな割引適用を可能にします。
  • 連携サービスの拡大: 交通機関、飲食店、レジャー施設など、多くの事業者でミライロIDの提示による障害者割引が導入されており、その数は増え続けています。
    • 例:「Coke ON」(コカ・コーラの自動販売機アプリ)では、ミライロIDと連携することで、自動販売機での割引が適用されるサービスを提供しています。
  • クーポン・チケットの提供: 提携施設のお得なクーポンや、障害者割引価格のオンラインチケットを提供しています。
  • 情報配信: 障害種別に応じた生活に役立つ情報やお得な情報が配信されます。

結論

「最も多くの障害者支援を提供している電子マネー」という観点では、「障がい者用Suica」や「障がい者用PASMO」といった交通系ICカードが、公共交通機関での直接的な割引という形で具体的な支援を提供している点で、最も優れていると言えるでしょう。

しかし、電子マネー単独での支援というよりは、スマートフォンのアクセシビリティ機能との連携や、「ミライロID」のようなデジタル手帳サービスとの連携によって、障害のある方々の電子マネー利用の利便性や範囲が大きく広がっているのが現状です。

したがって、個々の障害の特性やライフスタイルに合わせて、

  • 交通機関の利用が多い方: 交通系ICカード(障がい者用Suica、PASMOなど)
  • スマートフォン操作に慣れている方や、より多くの店舗で使いたい方: コード決済(PayPayなど)とスマートフォンの音声読み上げ機能の併用
  • 様々な施設で割引を受けたい方: 「ミライロID」を導入し、連携している電子マネーやサービスを利用する

といった選択肢を組み合わせるのが、最も効果的な方法と考えられます。

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