障害を持つ方にとって最適なデジタルデバイスを選ぶ際には、個々のニーズや障害の種類、そしてどのような活動にデバイスを使用したいのかを考慮することが重要です。以下に、選定の際に考慮すべき点と具体的なデバイスの例を挙げます。
1. 障害の種類と程度を考慮する
- 視覚障害: 画面の読み上げ機能(スクリーンリーダー)、拡大機能、点字ディスプレイ、音声入力などが重要になります。
- 聴覚障害: 字幕機能、振動通知、手話通訳アプリ、テキストチャット機能などが役立ちます。
- 肢体不自由(運動機能障害): 音声入力、スイッチコントロール、タッチペン、大型キーボード、特殊マウス、アイトラッキングデバイスなどが有効です。
- 知的障害・発達障害: シンプルなインターフェース、視覚的な支援、音声ガイド、予測入力、集中力を維持するための機能などが考えられます。
2. 使用目的を明確にする
デバイスを何に使いたいのかによって、必要な機能や性能が変わってきます。
- コミュニケーション: 音声通話、ビデオ通話、テキストメッセージ、SNS
- 学習・仕事: 文書作成、プレゼンテーション、情報収集、プログラミング
- エンターテイメント: 音楽鑑賞、動画視聴、ゲーム
- 日常生活のサポート: リマインダー、スケジュール管理、ナビゲーション、スマートホーム連携
3. アクセシビリティ機能を重視する
多くのデジタルデバイスには、障害を持つ方向けのアクセシビリティ機能が搭載されています。これらを積極的に活用することが重要です。
- OSレベルのアクセシビリティ設定: スマートフォンやPCのOSには、視覚補助、聴覚補助、身体機能補助などの設定項目があります。購入前に確認しましょう。
- サードパーティ製アプリ・周辺機器: 特定のニーズに対応したアプリや、デバイスと連携する周辺機器も検討します。
4. 操作性・ユーザビリティ
実際に手に取って操作感を確かめることが理想です。
- シンプルな操作: 複雑な操作が苦手な場合は、直感的で分かりやすいインターフェースのデバイスを選びましょう。
- 物理的な操作性: ボタンの大きさ、配置、タッチスクリーンの反応性なども重要です。
- 持ち運びやすさ: 携帯性を重視するか、据え置きで使用するかによって、サイズや重さを考慮します。
5. サポート体制と情報収集
- メーカーのサポート: アクセシビリティに関するサポート体制や情報提供が充実しているメーカーを選ぶと安心です。
- 専門家やコミュニティ: 障害者支援団体や、同じ障害を持つ方のコミュニティから情報収集することも有効です。
具体的なデバイスの例と考慮点
スマートフォン・タブレット
- iPhone/iPad (iOS):
- 特徴: 非常に充実したアクセシビリティ機能(VoiceOver, Zoom, スイッチコントロール, AssistiveTouch, 聴覚デバイス対応など)。直感的でシンプルなインターフェース。
- 検討点: 高価な傾向。カスタマイズ性はAndroidより低い場合も。
- Androidスマートフォン/タブレット:
- 特徴: 種類が豊富で価格帯も広い。TalkBack, 拡大、スイッチアクセスなどiOSと同様にアクセシビリティ機能が充実。カスタマイズ性が高い。
- 検討点: メーカーや機種によってアクセシビリティ機能の充実度に差がある場合がある。
パソコン (PC)
- Windows PC:
- 特徴: Narrator, 拡大鏡, 音声認識、スイッチコントロールなどの機能。多種多様なハードウェアとソフトウェアが利用可能。
- 検討点: 設定が複雑な場合がある。
- Mac (macOS):
- 特徴: VoiceOver, ズーム、スイッチコントロールなど、iOSと同様に強力なアクセシビリティ機能。デザイン性も高い。
- 検討点: 高価な傾向。
その他のデバイス
- スマートスピーカー (Amazon Echo, Google Homeなど):
- 特徴: 音声での操作が中心なので、視覚障害や肢体不自由の方に非常に有効。情報検索、音楽再生、家電操作など。
- 検討点: 音声認識の精度。複雑な指示には不向きな場合も。
- 電子書籍リーダー (Kindleなど):
- 特徴: 画面のコントラスト調整、文字サイズの変更、読み上げ機能(一部モデル)など。
- 検討点: カラー表示はできない。
最終的なアドバイス
最も重要なのは、実際にデバイスを試してみることです。家電量販店やApple Store、専門の支援施設などで、触れて、操作感を確かめることを強くお勧めします。また、ご自身の障害の状況やニーズに合わせて、福祉機器の専門家や医師、理学療法士、作業療法士などと相談し、アドバイスを受けることも非常に有益です。
情報収集をしっかり行い、ご自身に最適なデジタルデバイスを見つけてください。
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障害を持つ方がデジタルデバイスを購入する際、費用負担を軽減するための補助金や制度はいくつか存在します。主なものとしては、国の制度と自治体独自の制度、さらに一部の民間団体の支援が挙げられます。
1. 国の主な制度
a. 日常生活用具給付等事業
- 概要: 身体障害者手帳または療育手帳を持つ人を対象に、日常生活上の便宜を図るための用具の購入費用の一部または全額が給付される制度です。給付基準額が設定されており、原則1割の自己負担があります。
- 対象となるデジタルデバイス:
- 意思伝達装置: 重度の肢体不自由などで意思伝達が困難な方が、文字盤、スイッチ、パソコンなどを利用して意思表示を行うための装置。視線入力装置(アイトラッキングデバイス)などが含まれる場合があります。
- 情報通信機器: 視覚障害者向けの音声読書器、点字ディスプレイ、拡大読書器、音声時計、地上デジタル放送対応ラジオなどが含まれることがあります。聴覚障害者向けのFAX電話、情報表示装置などが対象となる場合もあります。
- パソコンやスマートフォン、タブレット本体: 一般的に普及しているこれらの機器は、多くの場合「日常生活用具」の直接的な給付対象外とされています(厚生労働省の調査でも「いずれも給付、貸与の対象としてない」の割合が高いことが示されています)。しかし、特定の障害に特化した機能を持つ専用のアプリや周辺機器と組み合わせて使用される場合、その周辺機器やソフトウェア部分が給付対象となる可能性はあります。また、自治体によっては独自に基準を設けている場合があるため、確認が必要です。
- 申請窓口: お住まいの市町村の障害福祉担当窓口。
- 注意点: 給付対象品目や基準額、自己負担割合は自治体によって異なる場合があります。事前に詳細を確認し、申請が必要です。購入前に申請しないと対象とならない場合がほとんどです。
b. 補装具費支給制度
- 概要: 身体の機能を補完または代替し、日常生活や社会生活を営む上で必要な補装具の購入または修理にかかる費用を支給する制度です。原則1割の自己負担があります。
- 対象となるデジタルデバイス:
- デジタル補聴器、人工内耳(の構成品)など、感覚器の機能を直接補うものが主な対象です。
- 「重度障害者用意思伝達装置」が対象となることがあり、これにパソコンなどの情報機器が連携する場合があります。
- 最近では、補聴援助システム(FM方式だけでなくデジタル方式も)の実態調査が行われ、制度改定の必要性が指摘されるなど、技術の進歩に合わせて対象が検討される動きもあります。
- 申請窓口: お住まいの市町村の障害福祉担当窓口または身体障害者更生相談所。
- 注意点: 日常生活用具と同様、給付対象や基準額は定められています。専門医や身体障害者更生相談所の判定が必要となる場合が多いです。
c. 障害者雇用促進法に基づく助成金等(主に事業主向け)
- 概要: 企業が障害者を雇用する際に、必要な施設・設備の整備や、職務遂行上必要な配慮のためにかかる費用を助成する制度です。これは個人が直接受け取る補助金ではありませんが、もし障害者が就労目的で特定のデジタルデバイスを必要とする場合、雇用主がこの制度を活用して購入費用を負担してくれる可能性があります。
- 主な制度:
- 障害者作業施設設置等助成金: 障害特性に応じた作業施設や設備の整備費を助成。
- 障害者介助等助成金: 職場における介助者配置や、情報保障(手話通訳、点訳など)にかかる費用を助成。
- 特定求職者雇用開発助成金: 障害者をハローワーク等の紹介で雇用した事業主への助成。
- 窓口: 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の各都道府県支部。
2. 自治体独自の補助金・助成制度
国の制度に加え、各自治体(都道府県、市区町村)が独自にデジタルデバイスの購入費を助成する制度を設けている場合があります。特に、一般普及しているパソコンやスマートフォン、タブレット本体については、国の日常生活用具給付等事業の対象外となることが多いため、自治体独自の支援が重要になります。
- 例:
- 「障がい福祉分野のICT導入モデル事業」として、障害福祉サービス事業所がICT機器を導入する際の経費を助成する都道府県(例:大阪府、神奈川県など)があります。これは直接個人への補助金ではありませんが、施設利用者の利便性向上に繋がります。
- 個人向けに、IT機器の購入費用を助成する制度を設けている自治体も存在します。これは、「情報通信機器等購入費助成」「IT活用支援事業」といった名称で実施されていることが多いです。
- 情報収集方法:
- お住まいの市町村の障害福祉担当窓口に直接問い合わせるのが最も確実です。「デジタル機器の購入に使える補助金や助成制度はありますか?」と具体的に尋ねましょう。
- 各自治体のウェブサイトで「障害」「IT」「補助金」「助成金」「ICT」「情報機器」などのキーワードで検索してみるのも良いでしょう。
- 地域の障害者支援センターやICTサポートセンターでも情報が得られることがあります。
3. 民間団体・企業の支援
数は少ないですが、一部のNPO法人や慈善団体、企業が、障害を持つ方へのIT機器提供や、学習・就労支援の一環としてデジタルデバイスの費用を支援しているケースがあります。
- インターネットで「障害者 IT支援」「デジタルデバイド解消」「パソコン寄贈 障害者」などのキーワードで検索してみると、そうした活動を行っている団体が見つかるかもしれません。
補助金・制度を活用する上での重要なポイント
- 必ず事前に相談・申請する: ほとんどの補助金・制度は、機器を購入する前に申請し、承認を得る必要があります。購入後に申請しても対象とならないことがほとんどです。
- 複数の制度を組み合わせる: 一つの制度で全額がカバーされなくても、複数の制度を組み合わせて利用できる場合があります。
- 情報収集を徹底する: 国の制度は共通していますが、自治体独自の制度は地域によって大きく異なります。最新の情報をお住まいの地域の担当窓口で確認することが非常に重要です。
- 専門家のアドバイスを受ける: 障害者支援の専門家(身体障害者更生相談員、作業療法士、福祉用具専門相談員など)は、利用できる制度に関する情報を持っていることが多いです。また、ご自身のニーズに合った機器を選定する上でも、彼らのアドバイスは不可欠です。
購入費用を抑えるために、これらの制度を積極的に活用し、ご自身にとって最適なデジタルデバイスを導入できるよう、情報収集と相談を進めてください。