障害者を使って儲けるビジネスもある。どう注意すれば?

障害者ビジネスにおける注意点

障害者を支援する、あるいは障害者の雇用を創出するという名目で、不適切な利益を上げようとするビジネス(いわゆる「障害者ビジネス」)は残念ながら存在します。こうしたビジネスは、障害者ご本人だけでなく、そのご家族、さらには支援を必要とする方々全体の信用を損なう可能性があります。

悪質なビジネスを見極め、トラブルに巻き込まれないようにするために、以下の点に注意することが重要です。

1. 情報収集と相談を徹底する

  • 複数の情報源から確認する: 気になる事業やサービスがあった場合、その事業者だけでなく、関連する行政機関(市町村の障害福祉担当部署、都道府県の保健福祉部局など)、障害者支援団体、または地域の社会福祉協議会などに相談し、情報が正しいか、他に同様のサービスを提供している機関がないかなどを確認しましょう。
  • 専門家や信頼できる人に相談する: 契約を結ぶ前に、弁護士、司法書士、消費生活センター、または障害福祉に詳しい相談支援専門員など、中立的な立場の人に相談することをお勧めします。特に金銭が絡む契約や、長期的なサービス利用の場合は、慎重な判断が必要です。

2. 契約内容を詳細に確認する

  • 書面での契約を求める: 口頭での約束だけでなく、必ず書面で契約内容を確認しましょう。曖昧な表現がないか、サービス内容、料金、解約条件、トラブル時の対応などが具体的に明記されているかを確認してください。
  • 料金体系の透明性: サービス利用料や商品の価格が明確か、追加料金が発生する可能性があるか、どのような場合に発生するのかなど、料金体系が透明であるかを確認しましょう。相場と比較して極端に高額な場合や、不明瞭な費用が多い場合は注意が必要です。
  • 誇大な広告や説明に注意: 「必ず儲かる」「楽して稼げる」「誰でも簡単に成果が出せる」といった、過度に楽観的な言葉や誇大な表現には警戒が必要です。特に、障害者の特性を逆手に取ったような甘い言葉には、裏がある可能性を疑いましょう。

3. 事業者の信頼性を確認する

  • 事業実績や評判を確認する: その事業者がどのくらいの期間、どのような事業を行っているのか、実績や評判を調べましょう。インターネット上の口コミだけでなく、実際にサービスを利用している人の生の声を聞ける機会があれば、参考にすることも有効です。
  • 許認可の有無: 提供されるサービスによっては、国の許認可が必要な場合があります。例えば、障害福祉サービス事業者は、都道府県または市町村から指定を受けています。指定を受けているかどうかを確認することも重要です。
  • 事業者側の態度: 契約を急がせたり、質問に対して明確な回答を避けたり、説明が不十分な場合は、信頼性に欠ける可能性があります。

4. 契約を急かされても、その場で判断しない

  • 「今すぐ契約しないと損をする」「今日中に決めないとサービスが受けられない」などと、判断を急がせるような場合は、一旦立ち止まって冷静になりましょう。本当に必要なサービスであれば、後日でも契約できます。

障害を持つ方々が安心して社会参加できる環境が整備されることが最も重要です。不適切なビジネスに惑わされず、本当に必要な支援やサービスを見極める力を養い、何かおかしいと感じたらすぐに相談する勇気を持つことが大切です。

障害者の権利を守るためには、多岐にわたる具体的な措置が必要です。日本は2014年に国連の「障害者の権利に関する条約」(以下、障害者権利条約)を批准しており、その精神に基づいた国内法の整備や施策の推進が求められています。

以下に、主要な分野における具体的な措置を挙げます。

1. 法制度の強化と周知徹底

  • 障害者差別解消法の徹底と周知:
    • 2024年4月1日から民間事業者にも「合理的配慮」の提供が義務化されました。この義務が形骸化しないよう、事業者への啓発、相談体制の強化、紛争解決の仕組みの整備が必要です。
    • 何が「不当な差別的取扱い」にあたるのか、何が「合理的配慮」として求められるのか、具体例を示しながら社会全体への理解を深めるための啓発活動を継続することが重要です。
  • 障害者虐待防止法の機能強化:
    • 虐待の早期発見、通報義務の徹底、専門機関による迅速な対応、被害者保護の仕組みの強化が必要です。
    • 特に、養護者による虐待(家族や親族による虐待)や、施設・事業所での虐待を防止するための、職員研修の義務化や、外部監査の導入、第三者評価の厳格化などが求められます。
    • 虐待通報窓口の認知度向上と、通報者保護の徹底も重要です。
  • 成年後見制度の利用促進と適切な運用:
    • 財産管理や意思決定支援の必要性がある障害者にとって重要な制度ですが、本人の意思を尊重した運用がなされるよう、制度の改善と適切な運用を監督する体制の強化が必要です。
    • 利用手続きの簡素化や、費用負担の軽減策も求められます。

2. 教育・就労における支援強化

  • インクルーシブ教育の推進:
    • 障害の有無にかかわらず、すべての子どもが共に学び、育つ「インクルーシブ教育システム」の構築が必要です。
    • そのためには、通常学級における専門教員の配置、合理的配慮を提供するための学校施設のバリアフリー化、教材の多様化、個別指導計画の充実が不可欠です。
    • 教員の専門性向上のための研修や、地域との連携強化も重要です。
  • 障害者雇用の促進と質の向上:
    • 法定雇用率の達成だけでなく、障害者が能力を発揮できる職場環境の整備と、安定した雇用継続を支援するための措置が必要です。
    • 合理的配慮の提供だけでなく、職業訓練、スキルアップ支援、キャリア形成支援の充実が求められます。
    • 多様な働き方(短時間勤務、テレワークなど)の推進や、精神障害者・発達障害者への支援体制の強化も重要です。

3. 地域生活への移行と質の高いサービス提供

  • 精神科病院からの地域移行の推進:
    • 長期入院を強いられている精神障害者が地域で生活できるよう、グループホームや訪問看護などの地域生活支援サービスの拡充が必要です。
    • 退院後の生活支援計画の個別化と、医療・福祉・地域が連携したサポート体制の強化が求められます。
    • 強制入院の要件の厳格化や、身体拘束・隔離の廃止に向けた具体的な方策も重要です。
  • 相談支援体制の強化:
    • 障害者とその家族が、必要な情報やサービスにアクセスできるよう、質の高い相談支援専門員の育成と増員が必要です。
    • 相談支援機関が、特定のサービス事業者から独立し、中立的な立場で本人にとって最適な選択肢を提示できるような仕組みが求められます。
  • 質の高い障害福祉サービスの提供:
    • 利用者のニーズに応じた多様なサービスが提供されるよう、サービス提供事業所の質向上に向けた評価基準の明確化や、第三者評価の導入が必要です。
    • サービスの選択肢を広げ、利用者が主体的にサービスを選べる仕組みの強化も求められます。

4. 意思決定支援と司法アクセスの確保

  • 意思決定支援の推進:
    • 障害者自身の意思や希望が尊重されるよう、意思決定支援の研修を受けた専門職の育成や、支援計画の作成・実施が重要です。
    • 特に、知的障害や精神障害のある方の意思決定能力を尊重し、一方的な支援にならないような配慮が必要です。
  • 司法アクセスの確保:
    • 障害者が司法手続きを利用する際に、適切な情報提供やコミュニケーション支援、合理的配慮が受けられるよう、司法関係者(弁護士、裁判官、警察官など)への研修や、支援体制の整備が必要です。

5. ユニバーサルデザインの推進と情報アクセシビリティの向上

  • 施設・設備のバリアフリー化:
    • 公共施設、交通機関、商業施設など、あらゆる場所でバリアフリー化を推進し、障害の有無にかかわらず誰もが利用しやすい環境を整備する必要があります。
    • 段差解消、手すりの設置、多目的トイレの設置、誘導ブロックの整備などが含まれます。
  • 情報アクセシビリティの向上:
    • インターネット上の情報、公共機関からの情報、災害情報などが、視覚障害者や聴覚障害者、知的障害者など、多様な障害特性を持つ人々にも理解しやすい形で提供されるよう、ウェブアクセシビリティガイドラインの遵守や、多言語・多形式での情報提供が必要です。

6. 啓発活動と社会の意識変革

  • 障害者への理解促進:
    • 障害への偏見や差別をなくし、多様性を尊重する社会を築くために、教育機関や企業、地域社会における継続的な啓発活動が必要です。
    • 障害当事者の声を社会に届け、共生社会の実現に向けた対話を促進することも重要です。
  • 「障害の社会モデル」の普及:
    • 障害は個人の特性ではなく、社会の側にあるバリアによって生み出されるという「障害の社会モデル」の考え方を広めることで、社会全体の意識変革を促すことができます。

これらの具体的な措置は、単独で機能するものではなく、相互に連携し、包括的に推進されることで、初めて障害者の権利が真に保障される社会が実現されます。

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