中日ドラゴンズが使ったボールを磨く就労継続支援B型事務所があるんですか?

中日ドラゴンズが使ったボールを磨く就労継続支援B型事業所があります。

元中日ドラゴンズの藤井淳志さんが立ち上げた「ATSH RAINBOW」という事業所が、実際にプロ野球選手が使用したボールを磨き、未来のプロ野球選手を目指す子どもたちなどに贈る活動を行っています。

この事業所では、ボール磨きの他にも、折れたバットを再利用したり、ユニフォームのワッペンを貼ったりといった、スポーツに関連する様々な作業を提供しているようです。

「ATSH RAINBOW」では、ボール磨きの他にも以下のような作業が行われています。

  • 折れたバットの再利用加工
  • ユニフォームのワッペン貼り
  • 矢場とんのネット販売用段ボール組み立て
  • 着物を解体して香り袋や草履に変身させる作業
  • 球場に設置されているガチャガチャのカプセル仕分け
  • 梱包、郵送作業
  • クリップ詰め
  • オアシス作り
  • ラベル貼り
  • 点字入れ

就労継続支援B型事業所は、利用者の個性や社会のニーズに合わせて、実に多様でユニークな活動を行っています。単なる軽作業ではなく、専門性やクリエイティブな要素を取り入れた、興味深い取り組みの事例をいくつかご紹介します。


1. スポーツ・リサイクルに特化した事業所

中日ドラゴンズのボール磨きのように、特定のスポーツチームと連携したり、スポーツ用品のリサイクルに特化したりする事業所があります。

  • 活動内容
    • プロ野球チームが実際に使ったボールや折れたバットを磨き、再利用する。
    • 野球場から回収したゴミを分別する。
    • 古くなったユニフォームやウェアのワッペンを剥がしたり、解体したりして素材を再利用する。
  • 特徴と目的 スポーツという共通の趣味や興味を持つ利用者が集まることで、作業へのモチベーションが高まりやすいのが特徴です。また、選手が使ったものに触れることで、大きなやりがいを感じられるという声もあります。チームやファンとの接点を通じて、社会とのつながりも生まれます。

2. IT・クリエイティブ分野に特化した事業所

Webサイト制作やデザイン、動画編集といった専門的なスキルを習得できる事業所も増えています。

  • 活動内容
    • 企業のWebサイトやランディングページ(LP)の制作。
    • プログラミング学習、データ入力作業。
    • YouTube動画の編集やサムネイル(画像)制作。
    • 名刺やチラシのデザイン作成。
    • 企業のSNS運用代行。
  • 特徴と目的 利用者が将来的に一般就労する際の選択肢を広げることを目的としています。デザインソフトやプログラミング言語といった専門スキルを身につけることで、自信につながり、高賃金の仕事に就く可能性も生まれます。

3. アート・表現活動を支援する事業所

利用者の創造性を活かし、アート作品の制作やグッズ化、販売までを手がける事業所も多くあります。

  • 活動内容
    • 絵画、書道、陶芸、造形などの創作活動。
    • 利用者が描いたアート作品を商品(バッグ、Tシャツ、文房具など)のデザインとして活用。
    • 企業や病院などの壁画制作依頼を受注する。
  • 特徴と目的 アート作品として価値を見出すことで、利用者の自己肯定感を高めます。また、作品が商品化され売れることで、自身の働きが社会に認められる喜びを感じられます。一部の事業所は、障害のある作家のアートを社会に発信している「ヘラルボニー」といった企業と連携しているケースもあります。

4. 農業と地域貢献を組み合わせた事業所

障がい福祉と農業を組み合わせた「農福連携」の一環として、独自のブランド野菜などを生産・販売している事業所もあります。

  • 活動内容
    • 特定のブランド野菜やハーブの栽培、収穫、袋詰め。
    • 規格外になってしまった野菜を使った加工食品(ジャム、ピクルスなど)の製造。
    • 地元農家と連携して、人手不足を補う作業の支援。
  • 特徴と目的 自然の中で体を動かすことが、心身の安定につながることが期待されます。また、自分たちが育てた作物が地域のスーパーやレストランで販売されることで、地域社会の一員として貢献しているという誇りを持てます。

5. eスポーツに特化した事業所

eスポーツのトレーニングを通じて、社会性を育んだり、就労につなげたりする新しい形の事業所も登場しています。

  • 活動内容
    • プロの指導者からeスポーツのスキルを学ぶ。
    • チームでの練習を通じて、コミュニケーション能力を養う。
    • eスポーツの大会出場を目指す。
    • ゲーム実況配信や動画編集など、関連する作業を行う。
  • 特徴と目的 eスポーツは年齢や障がいの有無に関わらず、誰もが楽しめるバリアフリーなスポーツです。チームで目標に向かって努力する過程で、コミュニケーション能力や協調性を身につけることが期待されます。また、eスポーツの盛り上がりとともに、関連する仕事への就労を目指せるという可能性も秘めています。

就労継続支援A型事業所の中にも、B型以上に専門的でユニークな活動を行っているところは多数あります。

B型が「訓練の場」としての側面が強いのに対し、A型は雇用契約を結び、最低賃金以上の賃金が保証されるため、「事業所として収益を上げていく」という側面がより強く求められます。そのため、独自の事業を展開して収益を確保している事業所が多いです。


A型事業所のユニークな活動事例

1. IT関連の専門職

ウェブサイトやソフトウェア開発、デザイン、動画編集など、高い専門性を必要とする業務に取り組む事業所が増えています。利用者には、プログラミング言語やデザインソフトの使い方を学びながら、実際の企業からの案件をこなしていく機会が提供されます。

2. 飲食店の運営

カフェやレストラン、パン工房、お弁当屋などを自社で運営している事業所も多いです。利用者は調理補助、接客、レジ対応、商品の企画・販売など、実際の飲食店の運営に関わることで、より実践的なスキルを身につけることができます。

3. 農業と加工品の製造・販売

自社の農園で野菜や果物を栽培し、それを加工してジャムやジュース、ドレッシングなどのブランド商品として販売している事業所もあります。農業から加工、販売までの一連の流れに携わることで、商品が生まれる喜びや、地域貢献の実感を強く感じられます。

4. その他、多岐にわたる事業

  • 古民家再生・宿泊施設の運営 地域の空き家を改修して宿泊施設として運営し、清掃や予約管理、接客などを担います。
  • eスポーツ B型でも見られますが、A型ではプロチームの運営サポートや、イベントの企画・配信など、より事業性の高い活動を行うケースもあります。
  • リサイクル・製造 衣料品や木材などのリサイクル、家具や雑貨の製造・販売など、独自のアイデアを活かした事業を展開しています。

B型との主な違い

A型事業所のユニークな活動は、「雇用」という大きな責任を伴う分、より高度なスキルを習得する機会が多く、一般就労への移行も視野に入れた支援が行われるのが特徴です。

利用者にとっては、自身の興味や得意なことを仕事にできる選択肢が増え、安定した収入を得ながらスキルアップを目指せるというメリットがあります。

就労継続支援B型事業所を作ることは、決して簡単ではなく、専門的な知識と多くの時間、そして資金が必要となるため、難易度は高いと言えます。

主な難しさのポイントは以下の通りです。

1. 厳格な「指定基準」のクリア

都道府県知事から指定を受けるためには、以下の3つの基準をすべて満たす必要があります。

  • 人員基準
    • 管理者、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員などを、定められた資格や人数で配置する必要があります。サービス管理責任者は実務経験や研修受講が必須であり、この要件を満たす人材の確保が特に難しいとされています。
  • 設備基準
    • 訓練や作業を行うための「訓練・作業室」、相談を行うための「相談室」、衛生的なトイレなど、利用者を受け入れるための設備を確保し、基準を満たす必要があります。
  • 運営基準
    • 利用者一人ひとりの個別支援計画を作成し、それに沿ったサービスを提供することが義務付けられています。また、工賃の支払いや、事業所の情報を開示することも求められます。

2. 多額な初期費用

事業所の設立には、多額の資金が必要となります。

  • 物件取得費 訓練・作業室として利用できる物件の賃料や改修費。
  • 設備費 机、椅子、作業台、パソコンなどの備品。作業内容によっては、専門的な機器や工具が必要になります。
  • 人件費 開所前の準備期間や開所初期の人件費。
  • 運転資金 利用者が安定して集まるまでの間、家賃や人件費などの経費を賄うための資金。

3. 複雑で膨大な書類作成と行政手続き

法人格の取得(株式会社、NPO法人など)から始まり、事業計画書、運営規程、従業員の雇用契約書など、膨大な量の書類を作成し、行政に提出する必要があります。これらの書類は専門性が高く、不備があると申請が通らないため、何度も行政とやり取りを重ねる必要があります。

4. 事業の安定化

設立後も、安定した運営を続けるのは容易ではありません。

  • 利用者の確保 利用者が集まらないと、事業所としての収入が得られません。
  • 仕事の確保 利用者に提供する作業(仕事)を継続的に確保する必要があります。工賃の支払いに直結するため、事業所の収益性と利用者のやりがいを両立できる仕事を見つけ続けることが課題となります。

これらの難しさから、多くの場合は行政書士や専門のコンサルタントに依頼して、手続きや書類作成をサポートしてもらうのが一般的です。強い理念と情熱、そして綿密な準備が不可欠な事業と言えるでしょう。

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